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「またあなたですの?」


「それは、こちらのセリフだが」


爺に湿布を渡してから、一週間ほどあとのこと。

わたくしは素材不足に耐えられなくなり、再び夜中に教会を抜け出していました。

この間と同じように畑がある地帯まで足を伸ばしたところ、再びかの男性と会ったのです。


「夜は危ないと言っただろう」


「ええ、爺にも注意されましたわ。ですから、今回は安全策を用意してきました」


修道服の良いところは、貴族の着るドレスよりも機能的なところですわね。

ポケットの中から、ガラス玉を取り出します。

と言っても、ただのおもちゃではなくってよ。


「これはなんだ?」


「勢いよく投げると、ガラスが砕けて中の液体が破裂するの。ミルトの濃縮液が霧になって、相手の目と呼吸を潰しますのよ」


「……………強力そうだ」


その辺の石からガラスを作り、子供達が集めてくるミルトの葉をちょろまかして濃縮液を作った。

これなら、教会の中でも錬成できますからね。

あり物でこんなに素晴らしいモノを作るなんて、わたくしったらなんて優秀な錬金術師なのでしょう。


「ひとつ分けて差し上げましょうか?」


「良いのか?」


「ええ、身近な素材で作れる物ですから」


錬金術でモノを作るのは楽しいけれど、作り続けているとどんどん自室を圧迫します。

あのウサギ小屋もかくやと言った狭い部屋をうまく運用しようと思うと、手に入った素材はどんどん錬金術に使って出来上がったものは使うか人にあげるかが最適解になる。

屋敷に住んでいた頃は、物を置くスペースなんて気にしたこともなかったのに。

わたくしがストレスで死んでしまったら、やはり家族のことはちゃんと祟っておきましょう。

人をいきなり危険地帯に追いやっておいて、安らかに生きていけると思ったら大間違いだって教えてあげなくては。


「気に入ったら、いくらでもあげますわ。教会まで取りに来て」


「……わかった」


これなら、非力な人間でも簡単に使える。

それに成分的にも悪いものではないから、暴発した場合にも後遺症などはない。

我ながら、素晴らしいアイテムを開発してしまいましたわね。

今後は素材を取りにいく子供達にも、持たせてあげましょうか。

別に危険な場所には行っていないようだけれど、万が一ということもあるし。


杖の先につけた宝石で周囲を照らしながら、採取を始める。

本当は虫とか獣の糞とかも使い道があるのだけれど、それを保管するためにはたくさんの容器が必要になりますわ。

物資不足の今は、ちょっと難しいですわね。

しゃがみ込んで木の根からキノコを採っていると、背後から声がかかりました。


「そのキノコでは何が作れるんだ」


「色々ありますけれど…そうね、これは睡眠薬にしようかしら。爺が最近眠りが浅くて、困っているらしいのよね」


何歳なのかは知らないけれど、爺は割と身体中にガタが来ている。

睡眠やら関節痛やらに効くアイテムは作ってあげられるけど、根本の老いをどうにかすることはできない。

錬金術を極めれば生き物の時間すら操ることができるのだから、これはわたくしが未熟なんですわね。

卒業して王太子妃になれば、趣味の時間は全て錬金術に費やそうと思っていたのに…。

手に入りにくい本も、珍しい素材も権力にものを言わせ収集する気満々だったのに!


「君は、そういうものばかり作っているのか?」


「そういうもの?」


「そういう、人の役に立つものばかりを」


どうかしら。

深く考えたことはなかったわね。

わたくしにとって大事なのは、結果ではなく工程だった。

何を作るにせよ、錬金術に大事なのは理解。

種を花にする。花を染料にする。染料からまた新しいアイテムを作る。

錬金術を使うと、ある物が全く違う物に変化する。

その手品みたいな業を何度でも間近で見たくて、わたくしは釜にエーテルを注ぐの。

だからぶっちゃけてしまうと、出来上がった物はなんでも良い。

完成品をいちいち部屋に置いていては、いつか居場所がなくなるから。

他人が必要とする物を作って、渡してしまいたい。


「そうかもしれないわね」


「………そうか」


男はわたくしを見ながら、目を細めて言いました。

なんなのかしら、含みを感じるわ。

言いたいことがあるのなら、ちゃんと言えば良いのに。

なんだか煮え切らない男ね。

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