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召喚術士と世界樹の島  作者: 空野
1.白花と竜翼
13/56

2-4


「ワシ思うんだけど、ちょっと大人げないのでは?」


木陰に設置した椅子の上に座った会長が、のんびりと発言する。


「さすがにグレンを出し抜けとは、無理難題が過ぎない?」


「まぁ、出し抜けなくとも動きが良ければ合格にしてやれば良いでしょう」


立ったまま後手を組んでいるハロルドがにこやかに答え、さて、どうですかな、と森の奥の方を見た。


七華一座が森の奥へと、会長の杖を探しに入って行ってから10分ほどが経過していた。


杖を持った会長の護衛は、そこまで深い所には隠れていない。そろそろ、見つかっても良い頃合いのはずだった。


(めんどくせぇ)


会長やハロルドよりも森に近い位置に立ったグレンは、ふぅと息を吐く。

トントン、と爪先で地面を蹴って時を数えていた。


サマナーも暇ではない。自分の隊の管理もしなければならないし、次に森に〝探索〟あるいは〝出撃〟する際の準備、前回の探索の成果に関する分析や報告だってしなければならない。


(俺はそういう書類作業方面にマメな方ではねぇが)


立場上、まったくしないわけでもない、というのは、ハロルドとてわかってるはずだろうにと、グレンは腕を組み直しながら内心で吐き捨てる。


「人のことを便利な万能使用人扱いしやがって。人使いが荒ぇんだよ、腹黒め」


チッと内心ではなく直接舌打ちした時だった。


「お、きたね」


ハロルドが呟く。

ピィィ、と指笛が森の奥から聞こえて来ていた。


(……南東の方角か)


音の出所を瞬時に把握したグレンは、とっとと済ませてしまおうと、その方角に走り出そうとして。


「お?」


「なんじゃ、なんじゃ」


ハロルドと会長が同時に声を上げ、グレンも出し掛けた足を止めた。


ピィィ、ピィィ、と、それぞれ別の方角から、複数の指笛の音が聞こえる。


「ほぉ、攪乱か」


ハロルドが愉快そうに呟き、グレンは再び舌打ちする。


「単純に考えれば、最初の音が本命で、残りは攪乱……だと思うけどねぇ。まぁ、そんなお粗末な作戦じゃないだろうね」


ふむふむと感心した様子のハロルドに背を向けたまま、考える。


(順当にいけば最初のが本命だ)


本物の指笛が鳴るよりも明らかに早く、すなわち杖を見付けていない段階で偽の指笛を鳴らす利点は、あちらにはない。せっかく杖を見付けるまではグレンに見逃してもらえているのに、自らその利点を捨てることになってしまう。

しかし、偽物の笛を各方向から吹くためにバラけてしまえば、本物の笛が鳴る瞬間がいつになるかは、それこそ本物の音が鳴るまでわからないのだ。

だから、素直に考えれば、攪乱の笛は本物の音が鳴ってから吹かれる。つまり最初に聞こえた笛の音こそが本物である。


(だがそんなお粗末な作戦ではないだろうよ。おそらくは、杖の在処を見付けてから散開してる)


杖を持った護衛の姿を確認し、しかしすぐには杖を受け取らず散開したと考える方が自然だ。

散開後、たとえば5分後に偽の笛を鳴らすと決めておくのだ。そうすれば、5分後に偽の笛が鳴ると同時に杖を受け取ることで、本物の笛を偽物の笛の後に鳴らすことができ、なおかつ、指笛が鳴るまではグレンが動かない、という利点も最大限享受することができる。


「めんどくせぇな……」


グレンは溜息を吐いて、腰の片手剣とマンゴーシュを抜いた。

そうして、仁王立ちすると、ジッと森の方角を睨む。


「おやグレン、動かないのかい?」


ハロルドの声に、あん?と視線だけチラリと振り向く。


「追っかけなきゃならねぇ理由がねぇだろ」


ここで全員迎え撃つ、と。断言して佇むグレンに、それは、と会長が呑気そうな、けれど少し気の毒そうな声を上げる。


「それは……さすがに無茶過ぎない?」


お前が待ち構えているのを正面突破して、その背後の自分のところまで到達するのは、いくらなんでも無理だろう、と。


「グレンや、それは、おとなげないじゃろ……、さすがに」


「正々堂々と正面勝負してやろうってんだ。だいたい本物の森にいるバケモン共にゃ大人げもクソもねぇだろ」


吐き捨てて、グレンはクルリと手の中で得物を回した。


「さて、手並み拝見だ」


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