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オネエな王子は無自覚な男装伯爵に翻弄される3

 王宮の中庭で二人っきり。

 そんな状況を想像していたサラサンは見事に裏切られた。

 あちらこちらの木陰から男女の囁き声が聞こえてきて耳障りで、彼は叫び出したい衝動に駆られる。

 そんな彼に反して背後のメルデルは暗がりでもわかるくらい顔を赤らめていた。

 それは囁き声に喘ぎ声が混じり始めたことが原因のようで、「彼」は居た堪れないようで顔を伏せている。

 中庭の外灯の淡い光が、ほんのりとメルデルの細い首を浮かび上がらせ、サラサンはそのめかしさに気持ちを支配された。


「殿下?」


 思わずその首を撫でて抱きしめたいと近づいたところで、「彼」が顔を上げて、サラサンは我に返った。


「ごめんなさいね。全然ゆっくり話せる雰囲気じゃないわね。広間のバルコニーにしましょう」

「はい」


 中庭はますます盛り上がりを見せており、メルデルが助かったとばかり小さく息を吐くのを見て、彼は微笑む。


 (可愛すぎるわ。初心だし。もう食べちゃたいけど、だめだめ)


 ザッハル義姉ラリアの顔を思い浮かべ気持ちを落ち着かせて、サラサンはメルデルを先導して広間に戻った。


 ☆


 広間に戻り、そのままバルコニーへとメルデルを連れて行こうとしたのだが、邪魔者が現れる。


「サラサン。久しいな」


 それは現国王の弟、つまり彼の叔父カスキスだった。

 王弟カスキスは王の息子ザッハルとサラサンの次に王位継承権を持つ。

 表だって王位に執着する様子は見せないが、サラサンは彼を警戒していた。

 その上、武闘派でもあり頭の固い叔父は女性的な彼を嫌っている。

 叔父に対していい感情はまったくなく、けれども邪険するわけにもいかず、内心舌打ちをしつつもサラサンは微笑みを浮かべた。


「今宵は中庭に男を連れ込んだのか?まだ少年ではないか」

「ほほほ。叔父上。連れ込むなんてひどいわね」


 叔父のひどい言葉には慣れていて、彼は悠然と返す。

 

「カスキス侯爵閣下。ご無礼をお許しください。私はメルデル・キャンドラ。少年ではなく、伯爵位を頂戴しており、キャンドラ領主でもあります。以後お見知りおきを」


 背後からメルデルの澄んだ声が聞こえて、サラサンは驚く。


「領地ではお茶を栽培しております。カスキス侯爵閣下にもぜひお試しいただけれらと思っております」


 「彼」は驚く彼に構わず、凛と前に出て叔父へ話を続ける。


「ははは。驚いたな。キャンドラ領主か。まだ若いな。無礼だと切り捨てることもできるが、まあ、よい。またな。サラサン」


 叔父カスキスは何を思ったか、それ以上絡むこともなく二人の前からいなくなった。


「サラサン殿下。出過ぎた真似をしたかもしれません。申し訳ありません」

「いいえ。全然。助かったわ。ありがとう」


 メルデルは彼の礼に少しはにかんだような笑みを浮かべ、サラサンはその可愛らしさに悶え、失礼な叔父のことなどすぐに忘れてしまった。

 カスキスが去ってから、改めてバルコニーに誘おうとしたのだが、それは叶わなかった。

 次々と貴族たちが話しかけてきて、その場に張り付くことになったのだ。けれども、メルデルがすぐ傍にいてくれて、その声を聞いたり、微笑みを横目で見ているだけで、サラサンの心は満たされ幸せなひと時を過ごすことになった。

 


 

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