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オネエな王子は無自覚な男装伯爵に翻弄される1

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。サラサン殿下。キャンドラ領主、メルデル・キャンドラです」


 サラサンが初めてメルデルに会ったのは、王主催のお茶会だった。

 自身の仕草、言葉使いが普通とは違うことを彼は理解している。王子としてもふさわしくないことも。

 社交の場では恰好の噂の餌食となることも。

 けれども、自身の生き方は変えられないと、彼は好きなように過ごしていた。

 ただ暇つぶしにネタにされるのはごめんだと、社交の場にはあまり姿を見せないようにしており、王主催の茶会など普段は参加しない。

 たまたま参加したら、そこで彼は可愛らしい伯爵に出会ったのだ。


「まあ、可愛い方ね。今回参加したかいがあったわ。あなたの席はそこね」


 やや強引とは思ったが、こんな可愛らしい人ともっと話がしたいとサラサンはメルデルを誘う。

 驚き、迷いなどの感情が見えて、それを隠そうとしているところなどが、また可愛らしくて、彼は困るメルデルを観察する。

 

「ありがとうございます」


 第二王子に誘われて断れる者など同じ王族しかいない。

 彼の予想通り、メルデルは彼の誘いに応じる。

 身分の高い者より先に座るのは無作法であり、「彼」はサラサンが着席するのを待っている。

 それが主人を待つ子犬のようで頭を撫でて愛でたくなったが、その気持ちを押し殺してサラサンは椅子に座った。

 

「失礼します」


 一声かけてから、メルデルは指定された彼の隣の席に腰をかけた。


 健康的な肌色に漆黒のサラサラとした髪。少しつり上がった瞳は新緑色。

 「男子」なのでもちろん唇に紅などは塗られていない。

 けれども柔らかそうな唇は薄い桃色で、サラサンは味を試したいみたいと欲を持つ。

 そんな彼の気持ちを知らないメルデルは、狼の前の羊のようなものなのだが、流石にサラサンは欲望を抑えた。

 けれどもサラサンは「彼」に夢中になり、じっと見つめながら知りたいことを質問する。 

 そうしてずっと「彼」を独占していたことに気がついたのは、茶会の終わりに差し掛かることで彼は慌てて謝罪する。


「ごめんなさいね。こんなに話し込んじゃって」

「殿下。そのような謝罪など必要ありません。殿下と話すことができて楽しかったです」


 微笑みながら答えるメルデルには嘘が見えず、彼は嬉しくなった。


「えっと、メルデルの領地はキャンドラよね?この後の予定は?戻るの?」

「はい。領地キャンドラに戻る予定です」

「そうなの。もっと話たかったのに。ねぇ、今度はいつ来るの?」

「1ヶ月後の夜会には出席するつもりです」

「そう、夜会ね。その時に会いましょうね」

「はい」


 お茶会より夜会に参加するほうが億劫なのだが、メルデルが参加するのであれば別だった。

 サラサンはその日興奮して寝付けないほどで、1ヶ月後の夜会を心待ちにすることになった。


 

 

 



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