表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/51

第二王子がオネエになった理由2


 王妃が亡くなり、サラサンが女性のように振る舞い始め、周りは戸惑った。

 元から王妃そっくりの容姿で、可愛らしい服ばかりを身に着けていたので、美少年というよりも美少女に見えるため、話し方と容姿に違和感はない。

 けれども、彼の性別は男である。

 違和感はないけれども、王子としては……。

 使用人を始め、王の臣下たちにも動揺が走ったのだが、王と第一王子がそのまま受け入れているので、騒ぐわけにもいかず、表面的には落ち着いていった。


 そうして2年が過ぎ、声高に違和感を口に出す少女が現れた。

 それは、宰相の娘であるラリアだ。

 数か月前から宰相と共に王宮に来ることが時折あり、彼女は物おじすることなく、サラサンに話しかける。


「殿下。やはりその話し方はおかしいと思いますわ」


 ラリアはその青い瞳をまっすぐ彼に向けて言い放つ。

 部屋にいるのは、ザッハル、サラサン、ラリアと侍女と騎士たちだけで、宰相の娘を止める立場の者は誰もいなかった。


「何がおかしいの?」

「だって、その。殿下は男の子ですもの」


 ラリアはサラサンと同じく10歳、王宮教育を受けているため、淑女然として彼に答える。


「そうね。私は男だわ。でも別にいいじゃないの。話し方なんて」

「それは、そうですけど」


 きっぱりそう言い返されて、ラリアは口をもごもごとさせるしかできなかった。

 それからも、ラリアは何かとサラサンに突っかかった。

 そうして二人は言い合うことが多かったのだが、サラサンはふと兄の視線に気が付いた。


(兄上は、ラリアのことが好きなのね)


 その想いに気が付き、同時に彼はラリアの気持ちにも気が付いてしまった。


(私、女の子って好きじゃないのよね。ラリアみたいに淑女らしく振舞る子も、私に言い寄ろうとする女の子も)


 兄のザッハルはどうやらサラサンの気持ちを誤解しており、二人が言い争っていてもほほえましく見守る兄の立場を示していた。


(ラリアも黙らせることもできるし、兄上も喜ぶわ。だから)


 そうしてある時から、サラサンは女性よりも男性に話しかけることが多くなり、その対応にも温度差をつけた。

 周りは再度騒ぎ始め、今度は兄だけでなく、父の王まで部屋を訪れる。


「……サラサンよ。お前は何を考えているのか?」

「父上。私、女が嫌いなのよ。私より可愛くないし、いろいろ面倒でしょう?」

「お前は、確かに、お前よりも美しい女性は少ないが……」

「サラサン、ラリアはお前よりもきれいだぞ。彼女は特別だろう?」


 家族会議の中で、ザッハルにそう問われ、サラサンはにっこり微笑む。


「ラリアは私と同じくらい、綺麗ね。でも女よ。だから嫌い」

「サラサンよ」


 きっぱり言い放った彼に対して泣きそうな反応を示したのは、王であり、その隣のザッハルは複雑な表情をしている。


「兄上。私は多分一生結婚しないわ。だからお願いね」

「あ、いや。サラサン。お前はまだ10歳だろう。これから変わることも」

「ないわ。私は絶対変わらない」


 サラサン、10歳。

 彼は父と兄の前でそう宣言するのだが、それから十年が近くが経過し、彼はその宣言を撤回することになる。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ