第二王子がオネエになった理由
本編で書けなかった話を書いていきます。
王妃サルビアによく似たサラサンは小さい時から可愛らしく、王妃の少女趣味もあって、フリルのついた女の子のような服を着せられることが多かった。
可愛いと言われて、父、兄たちに頭を撫でられることが好きで、サラサン自身も嫌がることなく、母の勧める服を身に着けていた。
そんな王妃サルビアが亡くなったのは、サラサンが8歳の時だった。
「可愛いわ」
それがサルビアの口癖で、ある時から彼が口にするようになった。それだけではなく、サラサンは女性のようにふるまうようになってしまった。
「サラサン、お前が無理して母上のように話さなくてもいいんだぞ。父も私も大丈夫だから」
しばらく様子をみていた兄ザッハルだが、ある時、サラサンの部屋を訪れると彼を諭した。
母の容姿そっくりで、口調まで同じだと、亡くなった母がまだそこにいるような気がすることもあって、ザッハルも王も彼の変化について何も言わなかった。
しかし、王妃の死から半年がたち、ザッハルは弟が心配になって、とうとう口にすることにしたのだ。
「兄上。無理なんてしてないの。私、この話し方のほうが楽なのよ。王子という立場でだめかしら?」
「え?そうなのか?無理してないのか……」
自分たちを慰めるために口調を変えたと思っていたザッハルは弟の告白に衝撃を受ける。
「始めはもちろん、父上と兄上を元気づけるためだったの。でもこうしてずっとこの話し方をしていると、ものすごい楽だなあと思ったのよ。だめ?」
「……お前が楽ならそれでいい。父もそう言うはずだ」
「そう。よかったわ。兄上、ありがとう」
サラサンはにっこりと微笑み、その笑みはやはり母そっくりで、ザッハルはなにとも言えない気持ちになってしまった。