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ベッドの上で



 王宮にいる時と同じく、二人は同じベッドで横になった。

 お互いに背を向けて眠る。

 毛布はそれぞれ別物を使う。

 最初は掛け毛布を共有していた二人だったが、どうやらメルデルが知らず知らずに奪ってしまうらしく、二つ用意してもらうことにしたのだ。サラサンは気にしていないといい、説き伏せるのに少し苦労したが、メルデルは今の形で寝ることに慣れてきていた。

 それは実家でも同じで使用人が不思議な顔をしていたのを思い出す。


 ーー夫婦なのに。そう思っただろうな。だけど、夜、知らないうちに私が毛布を奪っているみたいだから仕方ない。


 今夜も毛布を引き寄せて、彼女はサラサンに背を向けて体を丸くする。

 これはメルデルの小さい時からの癖で治らない。王妃なのだからと頑張ろうと思ったが、寝相まではどうにもならなかった。

 サラサンに猫みたいで可愛いと言われたこともあり、彼女は寝相に関しては諦めていた。


 ーーせっかく実家に来てもらったのに、喧嘩みたいなことになっちゃったな。ジャミンのことを正直に話すべきだったか。でも、あれは不敬罪に当たるかもしれないし。


 王子の気配を背中に感じながら、メルデルは悶々と考える。


 ーーサラサン殿下なら、不敬に問うことはないか。間者がまだ家にいることには頭にきたが、隠し事のように誤魔化したのはまずかったかもしれない。


 彼女は反省して、明日話そうと思ったが、なんとなく彼の様子が気になってしまい、寝返りを打つ。

 すると、サラサンはこちらを見ていて、驚かされた。


「で、殿下。まだ起きてらっしゃったんですか?」

「ええ。やっぱり気になって。私のメルデルは、あのちょっとカッコイイ赤毛の執事と何を話していたのかなあと思って。だって、彼はあなたのことが好きだったんでしょう?」

「は?」


 彼女は思わぬことを言われ、素っ頓狂な声を出してしまった。


「……知らなかったのね」

「本当ですか?いや、だって、私は男性として振舞っていたのに、まさか、えっと殿下と同じですか?」

「やーね。なんで、私と比較するの?ジャミンはあなたが女性ってことに気が付いていたはずよ」

「え~~~??」


 ーーそんなはずは。だって。


 メルデルは思わず体を起こしてしまい、首を横に振る。


 ーーなぜ、気づかれた?殿下同様匂いが違うとか思って、調べたとか?


 彼女が女性であることを知っていたのは、母と弟、元執事のベッヘン、と古参の使用人だけだった。他の者には気づかれないように極力身の回りのことは自身でしており、下着は男物であったが、自ら洗うことも多かった。


 ーーベッヘンが……。ありえない。それは。


 彼は口の堅い執事で長年、キャンドラ家を支えてくれた大切な人だ。


「メルデル。落ち着いて。私からしたらなんであなたが気が付いてなかったか、それは不思議だわ。あの熱を帯びた視線。恋をしてるに決まってるでしょう?」

「こ、恋?」

「そう。私もずっとそういう目であなたを見ていたのよ。まあ、気が付いてなかったみたいだけどね」

「……すみません」


 サラサンも体を起こして、二人はベッドの真ん中で向かい合うような形で座っていた。

 明かりは消していたが、目は闇に慣れてきており、彼の表情が良く見えた。

 暗い青色の瞳がメルデルを捉え、眉は痛みに耐えるようになぜか苦し気だ。


「メルデル。あなたは私の妃だけど、あなたが望んでなったわけじゃないわよね。だから心配なの。どこかに行ってしまわないかって」

「そんなことあり得ないです」

「そうよね。真面目なあなたならするわけがない。だから、私はこの手段をとってしまったの」


 ーー真面目な……。違う、そういうことじゃなくて。


 妃という立場から逃げたら、家に、領地に迷惑をかけてしまう。

 それだからこそ、妃業を全うしようとしていた。

 

 ーーだけど、それだけじゃなくて……。


「私はあなたを傍に置きたかった。妻であればずっと一緒でしょう?メルデル。私はあなたが大好きよ。誰にも渡したくないの」


 サラサンはメルデルの手を掴んで引き寄せた。

 咄嗟の事だったので、抵抗する間もなく、彼の胸にもたれる形になる。


「殿下、」

「ねえ。話してくれる?」


 甘く囁かれて、メルデルは頭の中が真っ白になってしまった。


 

 




 

 

 

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