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28.星の旅人

 一日で最深部には辿り着けなくて、魔除けの布と、同じく魔除けのテントを設営して交代で見張りをしつつ睡眠。マロも見張ってくれたので安心安全なダンジョンキャンプでした。

 で、次の日にはあっさりとガーディアンを攻略。ガーティアンは、とてつもなく巨大なミノブースでした。肉もデカかった。


「……もうシルバーでいいんじゃないか?」

「なんてことを!!」


 帰りは魔物とは戦わず真っ直ぐ入り口に向かったからか、止まらずに外に出れた。

 ダンジョンから出たシルヴィオの第一声に、はち切れんばかりに尻尾を振るマロ。そうだね、頑張ったもんね。

 ひとまずマロはちゃんともふもふして、マロが強いことも認めよう。だがしかし、私は弱い。そんなサクサク上がったら魔物だけじゃなく人の目も変わりそうで嫌なんだよね。

 シルヴィオとかリック君達のハヤテパーティーのみんなは喜んでくれるだろうけど。ああ、ハンナさんも喜んでくれそう。むしろ嬉々として上げられそう。


 あれ。私、困らないんじゃないか?

 知り合いみんないい人だって再確認だけできたということで、頭の隅っこにおいやろう。忘れよう。難しい依頼はまだやりたくないでござる。


「……今の所無理に上げたい理由ないし」

「ワフ?」

「う……お金は、うん。欲しいけども」


 お店開くんじゃないの?

 ガチャ回すんじゃないの?


 素晴らしい質問を可愛い顔で投げかけてくるマロ君やい。私は今大ダメージを受けました。だからそのもふもふで癒してください。


 そんな私の心境など気づかぬマロは、騎獣預かり所が見えてきた瞬間猛ダッシュ。一日ぶりにラプトス君と再会できて嬉しいのか、ダンジョン内であったことの報告をしてるみたいなんだけど。

 可愛らしいその様子を見ていると、やっぱり友達は必要だよなって思うんだよね。従魔ガチャセカンド。必要なんじゃないかって。


 私自身に魔物と友達になる能力はないし。犬は飼ったことあるけどラプトス君みたいな生き物は流石にないから、飼育が難しいし場所も難しい。

 そうなってくると、お金で買うってところが非常に申し訳ないんだけど、やっぱり従魔ガチャが一番いいような気がしちゃうんだよね。何より、従魔になることで意思疎通ができることがありがたい。

 嫌なことは嫌って伝えて欲しいしね。


「ランクかぁ」

「ん? 上げる気になったか?」


 預かり所からラプトス君を引き取り、鞍をつけていたシルヴィオに倣い私もマロに鞍をつける。考えてたことが声に出てたみたいで、自分でも現金だなと思いつつ頷く。


「実は私、お店を開きたくって」

「店?」

「うん。武器屋さんで見せた友達の武器もそうだけど、いろんなアイテムを売るお店をやりたいんだよね」


 武器はもちろんガチャ産のあれである。

 流石に「私がガチャで出しました」とは言えないから濁したけど、店を開きたいって夢の部分は話しても何の問題もないしね。


「資金を稼ぐってのはもちろんだけど、マロの協力もあればアイテム調達もしやすくなるだろうし。上げといた方がいいんだろうなって」

「まあ、そうだろうな。ダンジョンの低階層は総じて弱い魔物ばかりだから低ランクでも入れるところは多いが、ランク制限があるダンジョンも少ないが存在する。それに、店をやるならランクが高い方が信用を得やすいし、何より高ランクの店なら防犯面でも大きな効果があるだろう」

「……メリットしかない」


 ラプトス君とマロに跨り、新しい街に向かいながらシルヴィオの教えてくれた内容を聞けば、ランクを上げない(・・・・)って選択肢がある方が不思議だよね。わかる。私も今そう思った。

 特に防犯面。ゴールドランクの冒険者が店主の店に押し入ろうとはしないよね。まあ、見かけが私だったらまた別かもだけど。


「目指すならゴールドだな」

「……やっぱり」

「マロと一緒ならシルバーはすぐだろうな」

「それはもう何となく」

「ゴールドまでは時間がかかるだろうが、いずれは至れると思うぞ」

「マロのポテンシャルすごい」

「そのマロの手綱をしっかり握れているナギも十分すごいからな?」


 さりげなく褒めてくれるシルヴィオは紳士ですね。だがしかし、いくらマロがすごかろうと私は小心者なのだ。どうしようかなぁ。ってこれじゃあ最初に戻っちゃうから、ちょっとでも進まないとね。


「マロ、ランク上げたいって言ったらどう思う?」

「ワン!」


 頼もしいマロは即答で「手伝う」と返してくれました。イケメンが二人。イケメンとイケワンコか。


「ワンワンッ」

「ダンジョンかぁ。マロが行きたいなら叶えてあげたいし……よし」


 ダンジョンにももっと行きたいと言ったマロ。協力してもらってるからには、マロの可愛いお願いもしっかり叶えないと。

 従魔契約なのか、ガチャによる強制力なのか。きっとマロは私から離れられない。私を選んでくれた可能性もゼロじゃないと思うけど、一緒にいるからには楽しくいて欲しいし幸せにしてあげたいから。


「シルヴィオ。私、ランク上げ頑張りたい」

「なら、本格的にパーティー組むか?」

「パーティー?」


 シルヴィオ曰く、パーティーを組むことでそのパーティーの平均ランクの依頼が受けられるようになるらしい。ちなみに、シルヴィオと私で組んだ場合はシルバーとアイアンの間だけど、その場合は高い方のシルバーでいいんだって。

 ただ、ブロンズだけはブロンズの依頼だけ。流石に新人がいきなりゴールドとかの依頼は難しいだろうしね。

 プラチナの人も別枠らしいけど、まあ今は関係ないし。シルヴィオもそこまでしか言わなかったから気にしないでおく。


「元々ソロでハンター登録したからなんとなくソロのままだったが、特に目的が決まっているわけでもないしな。お礼の気持ちもなくはないが、純粋な興味の方が大きい」

「興味? ああ、マロ強いもんね!」

「そうだな。それだけじゃないが」

「うん?」


 他に興味でそうなものはあっただろうか。なんて首をかしげる私。呆れたようなマロのため息は聞こえたけど、わからんもんはしょうがない。

 まさか、チンチクリンな私に興味があるわけあるまい。って、言ってて悲しいからもう忘れよう。


「パーティーかぁ」


 真剣にパーティーについて考えてみる。

 正直、ここ数日過ごしている中でシルヴィオがいい人だってことはよくわかった。多分、マロも大きく頷いてくれると思う。

 でも、一緒に冒険するってことは、野宿とかもきっと増える。基本的には魔法カバンから出してるで済むと思うけど、気づかずにやらかすことは絶対に出てくるはず。うまい言い訳も浮かばないだろうし、一緒に行動すれば全部話さなきゃならなくなる未来が簡単に想像できる。


「ワン?」


 嫌なの?

 ってマロが言う。

 もちろん嫌じゃない。って、もうそれが答えじゃん。


「じゃあ、お願いしようかな!」

「そうか。じゃあこれからも、よろしく頼む」


 もし何かあっても、私にはマロがいる。

 私の、というかミニデバイスの力が知られたとして、あり得ないけどシルヴィオがそれを都合いいように使う人だったとして。

 だったら、マロと一緒に逃げればいいだけだ。


 何かあった時を想像してできることがあるなら、今から避ける必要はないし。好きなように動いてもいいはず。


「マロもいい?」

「ワンッ!!」


 シルヴィオを気に入ってるマロは元気に吠えて、少しだけスピードが上がった。それに苦もなくついてくるラプトス。さすがだ。


「そうなると、パーティー名を決めなきゃだな」

「そうなの?」

「臨時だったら不要だが、決まったパーティーだったら名前があった方が便利だからな。主にギルド側がらしいが」


 なるほど、処理手続き的なアレか。確かに、決まったメンバーならまとめちゃった方が楽そう。


「私はネーミングセンスがありませぬ」

「俺もそんなに自信はない」


 『もふもふ大好き』とかダメかな。ダメだよね。というかハンターらしくないもんな。


「ワンワン、ワフ?」

「星の……旅人?」

「すごいなマロ。俺はいいと思うが、ナギ?」


 多分それは、小さくない意味がある。

 マロと、私だけが知っている意味が。


 地球という星から、この星に旅してきた私。そして、この星で旅をする私達。

 この名前をつけたということはきっと、マロは確信しているんだろう。シルヴィオが、秘密を共有するに値する人物だと。


 なら、私には何も怖いものなんてない。

 秘密を背負ってもらうことになるから軽々しく告げる気はないけどね。


「うん。すごく、いいと思う」


 忘れない。

 たとえ戻れなくても、忘れない。


 押し黙ってしまった私を心配そうに見つめてくるシルヴィオと、しめ縄をそっと私の方にずらしてくれたマロ。

 溢れそうになったいろんなものを堪えそう言った私に、シルヴィオが唇を緩め、マロが安心させるように優しく鳴いた。

すんごく久しぶりの投稿になってしまいまして申し訳ありません。

更新は不定期になっておりますが、ちまちま更新していきますのでまた読んでいただけたら幸いです。


そして、ブックマークが増えていて、狂喜乱舞しております。

もし、もしお時間ありましたら、是非下の方にある☆☆☆☆☆から評価をしていただけると嬉しいです。

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