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大長との会談-2

開かれた扉の先は広い空間があった。左右に1列に座った蜥蜴(リザード)族たち、そしてその空間の一番奥には皮膚が他に比べて皮膚がたるんで皺が刻まれた一体の蜥蜴(リザード)族が物々しい雰囲気でダグを見ていた。

真っ直ぐ射貫かれた視線にダグは歴戦の強者の自負はあったが、その年老いた蜥蜴(リザード)に少しだけたじろいだ。『この老いた蜥蜴(リザード)がこの集落の大長(おおおさ)なのだろう』。ダグは直感的にそのことを察する。大長の前に敷かれた薄くて丸い敷物が空いており、そこに座るようにと大長は目で促す。ダグは一礼をすると、そこに座りあぐらを掻く。



「まずは我が子を助けて頂いた事に感謝します。あのような所に待っていて大変申し訳ありませんな、なにぶん色々事情がありましてな」



「(……やはり俺たちと同じ言語を喋れるのか) いえいえ、当然のことをしたまでです。1人で考え事をするにはなかなか良い部屋でしたよ。ああ、自己紹介がまだでしたな、俺はダグ・レオヴォルド。レンロック王国の王子だ」



 ”元”ととはわざとダグはつけなかった。

交渉ごとをするいは自らを小さく見せては上手くいくものも上手くいくはずがない。



「……儂はここで大長をしているガルロン。それで儂たちに何か話があるとか?」



 ぎらりと大長の目が妖しく輝く。

ダグはそれとなく自分を挟むように並んだ蜥蜴(リザード)族たちを見やると僅かに腰を浮かしており、ダグが大長に何か害意があるならば取り押さえようとする姿勢を見せていた。『内容次第』でダグの命運が決まってしまうのだが、ようやく”場”は整ったのだ。ここで引くわけにはいかない。



「”協力”が欲しいんだ」



「協力? 一体それは?」



「俺と一緒に来て欲しいんだ。あなたたちを丸ごと勧誘しに来た」



「ほーう? それは興味深いが、儂にはいまいち協力する利の意味がわからんのだが」



「そうだな。 ……あなたたちの子供が攫われることは昨日のことが初めてではないのだろう?」



「いやいや、我らの子が攫われるなどという不覚は()()()のこと。儂らはこれからもあのような不逞な輩を近寄らせることはあるまいよ」



「……これからやってくるあの不逞の輩がもっと増えるとしたら? 今は少人数でも恐らく近い将来、大軍でここに押し寄せたなら?」



「……大軍じゃと?」



「あなたたちは俺たちヒトのことなど余り区別はしていないだろうが、俺たちヒトにとってはこの辺りはヒト同士の国境になるんだ。隣の国を俺たちはバムフォードと呼んでるんだが、あなたたちをこの国が狙っている節があるんだ」



「ほう?」



 これはダグにとって賭けであった。全ては”憶測”に過ぎない。確かに先日の魔モノ攫いどもはバムフォード人である可能性が高いものの確証があるものではない。

『魔モノは良い金になる』、これは死んだ魔モノ攫いが得意げに話していたこと。恐らく嘘ではないのだろう。ということは魔モノの流通経路がどこかにあり、しかも魔モノに金を払うほどの価値があるということ。行き着く先は”乱獲”であることは容易に想像がつく。



「だからこそ、ヒト同士で解決を図る道もある。そのためにはあなたたちの協力が必要なんだ。あなたたちを助けようにも、我が国では魔モノに対して偏見が満ちあふれてるんだ。だからこそ、俺はヒトと魔モノが共存できる一歩として『魔モノ物園』を作りたいと考えている。ヒトと魔モノの交流の場として、な」



「……つまりその『魔モノ物園』で見世物にでもなれ、と?」




 大長のその言葉に辺りに居る蜥蜴(リザード)たちは小声でひそひそと話し始める。

思ってもいなかったであろうダグのその提案、そのざわめきの中で大長のみが静かに目を閉じて考えていた。そして思案がまとまったのか、ゆっくりと目を開けて口を開く。



「……つまり、このアンタと提案に乗らなければ遠からずに儂らは滅びる、と」



「ああ、そうだ」



「その提案だがな、”断る”」



 大長は無機質に感情を込めない声でダグにそう言い放ったのだった。






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