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無能力者が世界征服を試みるようです   作者: PPP
1章 冥界の森編
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01話 修行の次はまた修行

 道場から出た僕は酷く落ち込んでいた。


 (また、覚醒しなかった……)


 スキルを扱えるようになるには、特定の条件を満たす必要がある。

 一般的にその条件が 

 ・5歳になる 

 ・スキルを見る 

 ・剣を持つ


 と比較的簡単なものが多く、それを満たせば覚醒し、スキルを扱える体になる。

 能力が使えない者をレベル0とし、上記の条件を満たし覚醒すればレベル1となる。

 レベル2、レベル3も同様に条件を満たしていけば覚醒できるが、大抵の人間はレベル1止まり。

 条件の難易度が桁外れに高くなるためだ。

 レベル3ともなれば、英雄や勇者として国の最終兵器的存在として扱われる。



 ひたすらレベル1への覚醒のため、修行し続けてきた。

 しかし結局覚醒しないまま全ての武術を極めてしまった。


 もうこれ以上何をすれば良いのか分からない。

 そう落ち込んでいる僕にある人物が話しかけてきた。


「ようソラ!その様子じゃ変化はなかったみたいだな」


「そうなんだよ、じいさん! なんかそんな予感はしてたけど!」


 話しかけてきたのは、肩まで伸びたグレーの髪、紅い瞳をした身長2m弱はある中年男性。

 僕の保護者兼、師匠のジエンだ。


 雰囲気が老けているので、じいさんと呼んでいる。

 5年前、何者かによって滅ぼされた国で死にかけていた僕を助けた恩人でもある。

 武術だけでなく、勉強や世界の常識なんかも教えてくれた。

 今回の 大陸武術制覇の旅(ジエン命名)もこの人の考案だ。


「結局目覚めず終いか、まあいいじゃん! お前、武神とか呼ばれてるらしいぞ?」


 ニヤニヤしながらジエンが話しかけてくる。


「それも半分嫌味でしょ」


「そうしょげるなってー。

 とにかくこれからのことを考えよう。」


 ジエンと僕は場所を移し、人通りの少ない裏路地へやってきた。


「しかし、武術制覇、もっと時間かかると思ったんだけどなぁ。俺の予定じゃ3年は掛けるつもりだったのに。」


「僕も最初は長引くと思ったんだけどね。」


 というのも実は最初の道場で1年近く時間をかけてしまった。大陸内にある流派は25種、途方もない挑戦だと最初は思った。

 しかしある日突然、身体能力が桁外れに強くなったのだ。

 それだけではなく、技を見た時その本質が何となく見えるようになったのだ。

 それは日に日にはっきりと見えるようになり、あらゆる流派に対応できるようになった。

 結果、他の流派も難なく極めることができ、一年半でこの旅は終了した。


「あの時は覚醒きたー!って思ったんだけどね……」


「あれは理ってやつだな。武人の到達点みたいなもんだよ。アビリティとしてはかなり強力なもんだし、持ってて損はないぜ?」




 【アビリティ】

 修行や鍛錬によって身に付けることができるもの。

 スキルとは違い、魔力を使用しない。


 このアビリティをソラは修行を経て色々取得した。


【ソラのアビリティ一覧】


【感知】

 半径2kmまでの生体反応を感知することができる

(感知範囲には個人差がある。一般的に500mも感知できれば達人の域らしい。)


【超感覚】

 五感を研ぎ澄ませ、強化するアビリティ。

 ついでに反応速度、思考速度、身体能力強化。


【理】

 体術、武術においてその本質を見抜く + 身体能力強化。

 さらに、見た技を再現するまでの時間大幅短縮 + 技への対応策を選出することができる(対応不可の場合は不可)


【賢者の書】

 視認した物質、スキル、アビリティ、現象、生命体の解析を行い表示する。

 加工品や調合品の場合、材料やレシピ、加工方法も表示可能。



 スキル、アビリティの効果は取得時に脳内へ情報が入ってくる。



 アビリティの【理】、【超感覚】はともに身体能力強化の効果がある。これが重複したことで、ソラは桁外れの身体能力を手に入れた。並みの能力者なら封殺することも可能だ。


 能力者はスキルを使うまでに僅かな間が生まれてしまう。その僅かな時間さえあればソラは戦いを終わらせることができる。

 

 しかしこんなものでは満足できない。

 魔力を使えれば更に強くなれるからだ。


「もっと強くならないと、僕の夢はかなわない。」


「ああ、世界征服だったか?」


 世界征服、聞こえは悪いかもしれないが、それが僕の夢。

 きっかけはジエンとの旅だった。

 この世界では戦争が絶え間なく行われている。

 戦争によって親を失った子供、滅んでいった村や町、そんなものを数えきれないほど見てきた。


 戦争のない世界を作りたい。

 そのためには抑止力となり得る力を身に着ける必要がある。

 そんなふうに考えるようになった。


「それなら、光の勇者クラスの強さにならなくちゃなぁ」


 光の勇者とは、この世界に伝わる伝説で、今から1000年前、邪神によって滅ぼされかけていた世界を魔物や仲間の力を借り、救った英雄として言い伝えられている。

 しかし戦いの末、邪神と相打ちとなり命を落としたそうだ。

 その時勇者だけでなく、仲間であった【神】と呼ばれる存在も消滅してしまった。

 それが原因で世界の立て直しに随分時間がかかったそうだ。


「魔物の仲間か……そうだ!」


 ジエンが何か思いついたように声を上げた。


「どうした、じいさん?」


「ソラ、次の修行場所は魔物の世界だ。

 これから冥界の森に向かってもらう。」


「えっ」


 冥界の森、大陸中央にある魔物が生息する森林である。

 危険な場所らしく、一部の上位冒険者以外立ち寄れない場所となっている。


「人間の国でできることは全てやった。 

 魔物と接触すれば何か変化が現れるかもしれないと思ってな!」


「確かにそうだけど、どうやって行くの?

 まさか上位冒険者になるところから始めるとか?」


 森への立ち入りには上位冒険者の証明が必要だ。


「俺は転移魔法が使える。」


「あ、そうなんだ」


 今初めて知った。

 あまり驚かないのはこの人は大体のことができるからだ。


「あと、今回は俺はついていかないからな。しばらくお別れってわけだ。」


「まった。僕は転移魔法が使えない。

 どうやって帰ってくればいい?」


「ん~、まあ何とかなんだろ!」


 こっちの了承を得る間もなく魔法陣が展開される。

 まったく、いつも後先考えずやりたいことをやるなこの人は。


 こうなったらもう止まらないだろう。

 諦めて転移することにした。


「そうだ、これを返しておこう」


 そういうとジエンは一冊の本を投げてきた。

 僕のアビリティの一つ【賢者の書】だ。

 見たものの解析を行ってくれる。

 ジエンと世界各地を回っていた際、色んな植物や動物を興味深く観察していたら突如出現した。

 修行の間は必要ないためジエンにあずかってもらっていた。


「まあ、お前なら何とかなるだろ。 元気でな。」

 

 そういってジエンは転移魔法を発動した。


「じいさん」


 転移が始まる直前、ジエンに声を掛けた。


「僕、絶対覚醒してみせる。

 世界征服なんて余裕でできちゃうくらいにさ」


 ジエンはそれを聞き、少し笑いながら言い返してきた。


「そうだな。()()()()()()()()()。 期待して待ってるぜ~」


 視界が光で包まれ、ジエンの姿が見えなくなる。

 見えなくなる直前、気のせいかもしれないがジエンは少し悲しそうな表情をしていたように見えた。


 こうして、僕は冥界の森へ旅立った。

 更なる力を求めて__




 転移が完了し、一人になったジエン。

 若干名残惜しさを残しながらも歩き出す。


(これで第一段階終了、俺もそろそろ動くとするか)


 ジエンにも目的がある。

 それを実現させるため本格的に動き出す。



 そしてこの2人を中心に、世界は激動の時代を迎えることとなる。

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