遙かなる望郷の地へ-90◆「公国軍進撃16」
■ジョフ大公国/ジョフ平原
「狼狽えるな! 足を止めない限り、相手は脅威じゃないぞ!」
マイラムは麾下の部隊の1/3と共に、巨人軍の足止めを試みているマイラムは、愛馬を駆って部下を叱咤激励した。だが、何分練度が低い部隊のこと。巨人達からの投石攻撃に、浮き足立ってしまっていた。
「くそっ! このままだとジリ貧だぜ。何か打開策を考えないと、このまま今日が記念日になっちまうな」
自分にしては弱気な考えを笑い飛ばすと、馬首を巡らせた。兎に角、走り続けていれば補足されることはない──だが、馬が疲れる前に打開策を考えねば、確実にお仕舞いだった。
☆ ☆ ☆
一方、首尾良く森林地帯に待避したフレムの装甲騎兵達は、じりじりしながら軽騎兵の苦戦を見ていた。ともすれば、血気盛んな部下が飛び出していこうとするのを、フレムが抑えるのも幾度目かのことだった。
「お前達、マイラム隊長の努力を無駄にするつもりか。必ず好機はくる。それまで、待つのだ」
☆ ☆ ☆
「こちらに集結して下さい!」
マイラムの部下である軽騎兵の残りを纏めようと、物静かなアルノが声を張り上げた。隊長と分断され、軽騎兵達は混乱した状態でばらばらに後退してくる。そんな彼らを旨く誘導し、アルノはLAGの後を追って部隊を森林地帯へと誘導する。
「巨人達は追っては来ませんね。すると、マイラムの機動が彼らを足止めしていると言うことですか」
馬を止め、軽騎兵達の撤退を統制していたアルノは、地平線上に蠢く影に気が付いた。
「何でしょうか、あれは・・・」
サドルバックから遠見鏡を出すと、地平の影に目を向けた。
「なんと・・・。あれはオークの大群ではありませんか!」
雲霞のように、陸続とオークの群れが地平から現れてくる。そして、その進行方向は自分が立っているこの地点の様に思えた。
「迂回するつもりなのでしょうか? オークにしては姑息──しかし、それを罵っても何の解決にもなりません。この地点を迂回してくるとなると、公都は思わぬ方角から奇襲を受けることになりかねません」
パチンと遠見鏡を縮小して仕舞い込むと、アルノは馬首を巡らせてグランの元に報告に急いだ。
☆ ☆ ☆
アルノの報告に接したグランは動じなかった。
「どちらにせよ此方の動きを察せられた訳ではなければ、暫くは此方も様子を見よう。主力部隊は森の少し奥に再配置させ、偵察部隊のみを周辺に配置させよう。俺はマイラムの合流をここで待つ、卿は部隊の再編成を急いでくれ」
「了解です。フレムの装甲騎兵は後退させ、森の縁に練度の比較的高い軽騎兵を斥候として配置しておきます」
アルノはグランの指示に応えると、フレムと軽騎兵達に指示を出すべく馬を飛ばしていった。
「遙か」も今回の更新で九十話となりました。まだ先は続きますので、宜しくお願い申し上げます。




