遙かなる望郷の地へ-08◆「魔法剣士」
■ジョフ大公国/宮殿/客室→大広間
私の名はジャンニ。ご覧の通り、妖精族(High Elf)の魔法剣士だ。とある事件で、私はこの時代に跳ばされてきた。それ以来、何とか元の時代へ帰ろうとしているのだが――まだ良い方法が見つかっていない。
途中知り合った仲間と共に、私はイースタン南西部にある小国、ジョフの再興に助力することになった。永久の闇より、捕らわれていたレアラン姫を救いだし、大公女の位に就けると共に、このミッションは成功裏に終わった。その後、どういう訳だか自分でも判然としないが――まだジョフ大公国に滞在している。ここにいると、クリスと暮らしていたあの森の館が思い出させるからだろうか・・・
☆ ☆ ☆
私は、長距離でも移動が苦にならない。なぜなら、私には空間の足と風の翼があるからだ。しかし、今は早足で大広間へと急いでいる。
豊饒祭の間は何やかやと忙しく、早目に空蝉を創っておいて本当に良かった。ラボラトリィ建設のためには私があと何人か必要かもしれないが、お国柄を考慮して1人にしておいた。1人でも私は私、私とのリンクもあって設営は万端にこなされている。しかしそれでも、公は式典、私は“光の樹”の世話など、スペルのリサーチ並にバタバタとしてしまった。もっとも世話などといっても、どのように世話をしたらいいのかさえも解らず、見守ること以外にやることはなかった。
そうしていると、時は『アっ』と言う間に過ぎてしまう。写生も思ったより多く描いてしまった。その慮外の時間が、こうして私を急がせている。油断は、私が空間の足と風の翼を持っていたからなのだ。
こういった場合の徒歩は、実は余り好きではない。が、「郷に入っては郷に従う」のは当たり前で、個人が少々疲れることなどより、遥かに大事なことなのだ。
“宮殿に跳んでいったら、大目玉だからね”
微笑みかけると、肩に止まったマニトゥが透明ながらもうなずいた。さて、扉の向こうには大広間が広がっている。一息吐いて、一足踏み込み、
「皆々様方、おはようございます!」
礼の後に席と部屋を見渡し、
「・・・どうやら八点鐘には間に合ったようですね・・・、失礼致しました。」
私の為に用意された、グランとヒラリーに挟まれた席に、速やかに着いた。