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遙かなる望郷の地へ-85◇「公都攻防戦7」

■ジョフ大公国/公都/公都前防衛陣地


「報告っ!」


 本営のテントに走り込んでくる者がいた。コーランド軍の兵士だ。


「どうしたの?」

「はいっ、哨戒線から報告です。敵の前衛と接敵しました。このままの進軍速度ですと、明朝早くには公都の外郭防衛線に達する見込みです」

「な~る。りょーかいです」

「失礼致します!」


 兵士が去った後、ツィーテンはおもむろにカイファートとレアランの顔を見る。自制をしているものの、二人とも懸念の色が濃い。


「ツィーテン殿・・・」

「全ては予想の範疇ですよ。ご心配には及びません。突貫工事ではありますが、今晩中には防御陣地も完成します。後は、グラン殿とトリアノンさんの包囲作戦が成功するまで、私たちがこの陣地を守り抜くことですね」

「うむ・・・。厳しい戦いになるだろうが、この戦に我らの命運がかかっている。市民も、そのことを十分に心得ておる」

「私たちは、一歩も引きません──いえ、引くわけには行かないのです。公都を落とされれば、ジョフは再び瓦解の憂き目に合うことでしょう。わたくしも、先頭に立ってこの防御戦に身を投じます」

「大公女様・・・」


 決意を表に、レアランはきっぱりと言い切った。その姿に、在りし日の前大公ユーリシアスの面影を認めて、カイファートは胸に熱く感じるものがあった。


「大丈夫ですよ、お姫さん。その為の、我らです」


 珍しくも真摯な表情のツィーテンを、レアランは笑みを浮かべて見返した。


「はい。信じておりますわ」


   ☆  ☆  ☆


「ゆっくり、ゆっくりだっ!!」

「それは、こっちに配置するんだ!」

「矢は十分に用意しておけよ! それが死活問題になるからな!」


 公都前面の縦深陣地。ジョフ中央軍とコーランド派遣軍と共に、市民が参加して陣地の構築が進む。コーランド派遣軍代理司令、ツィーテンの卓越した指導の元、驚くほどの早さで各種施設が形を成していく。


「やぁ、カレン。そっちの具合はどうだ?」

「ほぼ完了、と言ったところです」


 コーランド派遣軍唯一の女性連隊長、カレン・ケイスナルドは同僚のフィリップ・コルベールに生真面目に応えた。


「ウチの戦力、遠慮無く使ってくれよ。癖がある小隊長ばかりだが、腕は立つ」

「はい、心得ています」

「なに、兵学校での作戦訓練を思いだせ。みっちり教えてやっただろう?」


 にやりと笑って、フィリップはカレンを見た。


「・・・それはもう、嫌って程に。教官殿」


 カレンも、薄い笑みを浮かべた。朝の接触まで、もはやあまり時間は・・・無い。




 いよいよ、敵軍との遭遇が近づきます。衆寡の差を撥ね除け、ツィ-テンは見事公都を護りきることが出来るのでしょうか?

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