遙かなる望郷の地へ-84◆「公国軍進撃14」
■ジョフ大公国/ジョフ平原
「早速悪い予感が的中ってところだな、急ぎ斥候を戻し森に潜むぞ。奴らが我らに気が付いているなら早くも一戦を辞さないが、それ以外なら奇襲かやり過ごす手も考えられる」
まだ遠方の影を見ながら、グランはフレムとアルノに指示する。
「最悪のシナリオは奴らに我らが各個撃破されることであったが、機先を制したお陰で、逆に我らが敵を各個撃破するチャンスも有るかもしれない」
軽騎兵を斥候に使ったのは正解であったろう。元々各種任務向きの兵科ではあったが、グランも自分の投入策がこうも的中するとは思っていなかった。
あとは斥候の撤収に際し痕跡を留めないで行うことが出来るかが心配事であった。仕掛けるなら完全な奇襲を狙う為である。
「公都へ連絡、我、OYDWOOD南西で巨人の一郡と接触。交戦状態に入ると思われる、敵戦力及び規模については改めて連絡する。以上だ!」
「了解っ!!」
フラムとアルノはグランの指示を実行に移すべく、自分の部隊に急いだ。
「ラッパは吹くな。東の森林に向かって静かに撤退する」
小声でフレムは配下の装甲騎兵連隊に指示する。
アルノのLAGは彼らの退路を護る役目だ。親衛騎士達は広く展開して、油断無く辺りを警戒する。恙なく、装フレムの甲騎兵連隊は首尾良く森林地帯に紛れ込んだ。
「マイラムの隊の撤収が遅れています」
遠見鏡を見ながら、アルノが状況をグランに報告する。
「マイラムから連絡です。・・・相手を巻く必要があり、我に構わず作戦行動乞う・・・連絡、打ち切られました」
アルノはぐっと奥歯を噛みしめた。
“マイラム、早まってはなりませんよ”
日に焼けた友の顔を心の中で思い浮かべた。生きて公都に戻らねばならない。こんな所で、志半ばで倒れていいはずがなかった。
“マイラム、信じておりますからね。しかし、今は心配するよりもやらねばならないことを優先させねば”
見ると、スイープサーチを掛けていた軽騎兵の各小隊が作成行動を中断し、全速で戻りつつあった。
「グラン様。マイラムの軽騎兵たちを纏めてきます。暫し御前を離れるご許可を」
■作戦マップ
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3│▲│▲│▲│ │ │ │ │W│W│R│W│
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4│▲│▲│ │ │ │ │ │ │ │R│ │
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5│▲│W│W│ │ │ │ │W│W│R│W│
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6│▲│W│W│W│W│ │巨│G│W│W│R│
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7│▲│W│W│W│L│ │ │ │∩│∩│∩│
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8│▲│▲│W│W│ │ │ │◎│∩│∩│∩│
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9│▲│▲│W│▲│▲│▲│∩│∩│∩│∩│∩│
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0│▲│▲│▲│▲│▲│▲│∩│∩│∩│∩│∩│
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備考:▲山地 ∩丘陵 W森林 R河川 ◎公都
Gグラン軍 Lレスコー軍 巨巨人軍
注釈:H6、E7は森林