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遙かなる望郷の地へ-83◎「深まる懸念12」

■ジョフ大公国/宮殿/大広間


「・・・はい・・・」


 気丈にも僅かな笑みを浮かべると、レムリアは観たものをより鮮明に思い出すかのように、瞳を閉じると語りだした。


「あれは・・・恐らくは“大地の聖域”です。“大地の聖域”から、黒い流れが吹き出していました」


 握りしめた両手が、小刻みに震えている。


「そして──その流れは天空までに達し・・・地から天に、いかずちが走りました。あの、あの雷が突き刺さった先は、“天の聖域”です・・・」


 言葉を絞り出すように語るレムリア。思い出すだけでも、レムリアの心と精神に、相当な負荷が掛かっているのだろう。


「・・・あのまま、ですと・・・天の・・・天の聖域の、障壁が解消されてしまい・・・天が、天が闇に犯されます…」


 そこまで話すと、レムリアがぐったりとして動かなくなった。微かに胸が上下しているので生きてはいるが、躰が氷のように冷たくなっている。


「ちっ、負荷の掛け過ぎだぜ。お姫さんも無茶するな」


 手早くポーチから手早く小瓶を出すと、“放浪の戦士”はそれをエリアドに差し出した。


「コイツを飲ませてやれ。多少は楽になるはずだ」

「・・・すまない。感謝する。」


 エリアドは、“放浪の戦士”が差し出す小瓶を受け取り、蓋を開けた。躊躇っている時ではなかった。意識のないレムリアに飲ませるため、エリアドは薬液を自らの口に含み、口移しに彼女に飲ませる。


「・・・レムリア。大丈夫か?」


 レムリアの言葉の内容に様々な想いをめぐらせながらも、エリアドはその細い手を握り、じっと様子を見守った。


「・・・だい・・・じょうぶ・・・」


 噎せながらも、なんとか小瓶の液体を飲み干したレムリアは、薄目を開けて囁く様に答えた。


「・・・心を・・・持って行か・・・れる、ところ・・・でした・・・」


 蒼白だった顔色に、多少の赤みが戻っていく。徐々に呼吸も楽になってくる。


「お姫さんよ、あんまり無茶しちゃ駄目だぜ。ダンナが泣くぞ」


 如何にも悪党、と言った笑いを浮かべて“放浪の戦士”がエリアドの肩をポンポンと叩く。


「それにしても・・・夢見のお姫さんにこんだけ打撃を与えるなんてね、そんじょそこらのヤツには出来ないさ。これは、相当な手練れが背後にいそうだね」


 腕組みして、うーんと唸りながら“放浪の戦士”はぶつぶつと一人ごちる。


「“書を護る者達”か、それとも“黙示録の四騎士”か。はたまた“契約の至高者達”の可能性も無きにしも非ず。“三騎龍”って線もあるな。“恐導騎士団”は潰れてしまっただろうから、違うにしても──いや、厄介なことだね」


 はぁ、と溜息を付く。


「申し訳ありあません。わたしが、もっとはっきり相手を見ておけば宜しかったのですが・・・」

「あ? あ、いや。お姫さんの責任じゃないさ。相手が誰だか判らないけど、生易しい相手じゃないことだけは確かだからね。これが判っているだけでも大きな一歩さ」


 安心させる様に、“放浪の戦士”はレムリアに笑いかけた。

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