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遙かなる望郷の地へ-81◆「公国軍進撃13」

■ジョフ大公国/ジョフ平原


 眼前を移動する各部隊を閲兵しながら、グランは最後の部隊が通り過ぎた後、自らも馬首をめぐらせ全軍の最前列に付いた。行軍はそのまま北方へ進み、OYT森林とジョフ平原の境を進む。いざ北西の方向にオークの侵攻部隊を発見した場合は急ぎ森の中に布陣できるような行軍であった。

 全体を見回しながら、グランは隣に位置するアルノに言った。


「今回一番苦労を掛けるのはマイラムであろうな」

「そうですね。一番練度の足りない部隊で、一番の働きが期待されていますから。寡兵の我々には、敵の情報を相手よりも早く把握することが肝心です。そう言う意味では、マイラムの索敵次第で戦局にも変化が出てきましょう」


 笑みを浮かべながら、アルノは北方遙かに展開していく軽騎兵達に視線を振った。


「マイラムは張り切ってますよ。マイラムだけではありません。フレムも私も、自分の祖国を護る為の戦いです。自分たちの道を自分たちで切り開ける──それを願うことはあれ、否定する者はいないでしょう」

「その通りだな。少なくともマイラムの働きで我らは先手を打つことが出来るだろうな」


 アルノの馬に黒王を寄せると、小声で副隊長へ話しかける。


「今回の戦いは眼前で繰り広げられるだけのことではないだろう。例えば前面のオークども群れだけではなく、我等の動きに呼応して巨人どもが動く可能性もある。また影で糸を引くものが戦いに介入してくる可能性も極めて高い。前にも話したが俺に何か起こったときは残った兵の事を最優先に考え、最善の判断をしろ。俺は俺で別の戦いをしなければ成らない局面も考えられるからだ、奴らに対し正面から戦えるのは俺だけだ、そのことを決して忘れるな」

「はい。心しておきます」


 生真面目なアルノは、グランの言葉に生真面目に返答を返した。


「しかし――“影で糸を引く”という者、あるいは者達ですが、どの様な相手なのでしょうか。この間まで、我が国を占拠していた“闇の勢力”に属する者達でしょうか?」

「さぁな」


 グランは前方の地平線を眺めながら呟いた。


「詳しいことは公都に残っている連中が調べていることだろう。 ただし悪い予感が当たっていれば前面のオークなど俺たちを吊り上げる餌でしかないだろうし・・・・それに奴らの戦闘力はこの俺でさえ、まともに三撃受けたら耐えられない程の実力だ、一般の兵が挑めるレベルでは無い、無駄に命を散らせる愚は冒させたくないのだよ」

「それほどの相手、なのですか・・・」


 アルノは口をつぐんだ。“国と大戦士様を護る為ならば、喜んで盾になりましょう”と、信念めいた風に言えれば格好は良いのだろうが、この異丈夫はそんな上っ面の発言など喜ばないだろう。

 だが、それでも──自分たちが敬愛して止まない大公女殿下が嘆く姿など見たくない。そんな想いをさせるくらいなら、喜んで盾にもなろう──そんな風に、アルノは心を決めていた。


“自分の代わりはいる。だが、大戦士様の代わりはいない”


 その想いは、アルノだけではなく、LAGの親衛騎士全員の共通した想いだった。


「せいぜい、邪魔にならない様に気を付けます」


 きっぱりと答えたアルノの心の奥には、堅い決意が生まれていた。

 答えるアルノの心情くらいは愚鈍なグランでも察しがつく、逆の立場を考えれば他愛のないことだ。


「なぁアルノ、そう心配するな。俺にはこの国の秘奥義がある。それにな神の加護も少しは付いているし姫を置いて楽なあの世に行く気もない、ましてや悪運はこの世で一番強いかもしれない。だがな、心配なのは俺の指揮を失ったこの部隊は、卿でしかまとめられないのだ。俺とて騎士の端くれだった時期があるから卿の心境は理解できる、それを圧しての頼みだ」


 グランは、アルノの目を覗き込むように話した。


「まぁ、最悪の事態での話だ。案外楽に終わるかもしれないが」

「はい、大戦士様。」


 豪快な中にも繊細な心使いを感じたアルノは、心に暖かいものを感じていた。そして、この人物をジョフと大公女殿下に与えてくれた天に感謝の念を覚えるのだった。


 その時。


「敵、望見っ!!」


 地平線の向こう側にいるマイラム麾下の軽騎兵から、予め取り決めてあった方法で報告が伝達されてくる。この伝達方式は、マイラムの考案であった。視界が届く最大限に展開した各小隊の間を、手旗式に報告が伝達される。伝令を飛ばすよりも遙かに早く報告が本営に伝わるのだ。


 馬上でその伝達内容を読みとると、アルノはグランに報告した。


「巨人の一群です。一路南下中ということです。このままですと、我が軍の進路と交差します!」

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