遙かなる望郷の地へ-76◆「公国軍進撃10」
■ジョフ大公国/ジョフ平原
『パパパパパーパパパパッラパパパーパー』
トランペットの澄んだ音が野営地に響き渡る。あちこちで頭がテントから現れると、出撃の支度に入る。
「やぁ、フレム。ぐっすり眠れたかい?」
揶揄するように、それでいて嫌味に聞こえないのがマイラムの特質なのだが──にやにや笑いながら友人が甲冑を身に纏うのを見ていた。
「お陰様でな。ぐっすり眠れたぞ」
「それはそれは。おっと、アルノが来たぞ」
LAG副隊長のアルノ・カリスタンが完全装備で歩いてきた。二人を見つけると挨拶に手を挙げる。
「お二人とも、おはようございます」
「おはよう、アルノ。準備は万全かい?」
「御覧の通りです。何時でも、出撃できますよ」
「心強い限りだな。よし、こちらも準備完了だ。グラン様をお迎えに行くか」
「よしきた」
「了解です」
三人は連れだってグランの天幕に向かった。天幕の前で立ち止まると、フレムが中に呼びかける。
「グラン様。三隊の出撃準備が整いました」
☆ ☆ ☆
トランペットの音で目が覚め、起こされた理由が敵襲でなかったことに安堵しつつも、決戦の日であることには代わりは無く、グランにとってややもすれば緊張した目覚めとなった。
そそくさと身支度を済ませると朝の祈りを済ませ、椅子に座り腕組みをすると静かに時を待つ。
少しすると三人の幕僚の声が聞こえる、グランはすっくと立ち上がり自分の天幕をでる。
「いよいよだな、諸君出かけるとしよう」
そこには昨日までの顔は無く、武人としての顔があった。