遙かなる望郷の地へ-75◎「深まる懸念10」
■ジョフ大公国/宮殿/大広間
「何奴!」
ジャンニはレムリア姫とエリアドの傍に駆け寄った。深刻な事態に陥る可能性に備え、いつでも姫に氏怒るべきサポート魔法を掛けられる体制を整えつつ、周囲の様子をうかがい、此方の手の者達へ念話で問う。
“皆供、此方は斯様な事態だが、様子に変化は無いか?”
特にケインとグランの友情によって芽生えた“白の樹”の元に居る我が使い魔に注意を促し、覗き見る。
“かのレアラン殿の心を陥れ損なった輩の仕業か?
・・・気になるな・・・”
☆ ☆ ☆
「・・・だい、じょうぶ・・・です」
レムリアの声は弱々しく、受けたのであろう打撃の大きさを物語っていた。
「“観えた”ものに、危うく心を持って行かれそうになりました」
「だから最初に言っただろ、お姫さま」
「はい。お陰様で、十分骨身に滲みました」
それでも微笑みを絶やさないレムリアに、『女性は強いねぇ〜』と笑った。
「妖精のキミ、警戒は不要だよ。ここには、もう何もいないからさ。力は、“この後”の為に温存して於いた方がいいよ」
魔法の発動に待機しているジャンニに声を掛けると、エリアドに抱き起こされているレムリアに注意を戻す。
「で? 何が観えたんだい?」
「大地から吹き出る黒い影・・・」
「大地から? 間違いないかい?」
「えぇ。そして、大地と天とが、六つの黒い電光で結ばれていました」
「はぁ、そいつは結構なことだね」
肩を竦めて、大仰に溜息を付く。
「も一つ。天と地に、魔法陣みたいなモン、観えなかったかい?」
「・・・観えた気がしますが・・・はっきりとは覚えておりません」
「そうだろうね。大体、そこまで観える事自体が奇跡的だよ。流石は“夢見姫”ってとこかな」