遙かなる望郷の地へ-71◆「公国軍進撃8」
■ジョフ大公国/ジョフ平原
「了解です。行軍は、一番内側をアルノのLAGに、その北に当方の装騎、更に北にマイラムの軽騎四と展開してはどうかと考えます」
「賛成です。ウチの隊で、なるだけ北までスイープサーチを掛けますよ。旨くすると、ルーの隊と接触出来るかもしれませんしね」
二人の仲間の表情を観ながら、アルノが穏やかに言った。
「いざという時は、LAGが突破口を開きますから。期待していてください」
「おぉ、言うねぇコイツ」
笑ってマイラムがアルノを小突く。
「異存は無い、その編成で頼む」
部下のやり取りを黙ってみながらグランは思った。良き幕僚に恵まれたことを神に感謝すべきであると。
そんな光景を見ながら、フレムがグランに進言した。
「グラン様。明日もありますので、お休みになって下さい。当方も、麾下の部隊に休息を命じますので」
「そうしよう、上官がいつまでも起きていては幕僚はいつになっても寝られないからな」
笑って話すと席を立つ。
「明日の活躍を期待する、お休み諸君」
そういい残すと、その場を離れた。
「お疲れ様です」
「良い夜を、グラン様」
「ゆっくりお休み下さい」
去っていくグランの背に、マイラムが笑みを浮かべていった。
「強い人だな。オレは、ああいう人に付いていきたいって思うぜ」
「同感だ。斯様な事態に有っても動揺もされていない。指揮官の態度がどうどうとしているから、部下にも安心感が広まっている」
「流石は、大公女殿下が“最強の戦士”と仰って深く信頼される方だけありますね。我々親衛騎士隊も、大公女殿下同様、大戦士閣下にもお仕えできることを誇りに思っております」
「そうだな。公国民もそう思っていることだろう。そして、その“想い”を護るため、この戦い、どうしても勝ち抜く必要がある。付け加えるならば、グラン様の言うとおり死に急いではならん。明日を築く為には、戦い抜いて生き残らねばならんのだ」
「勿論です」
「あたぼうよ」
三人は、堅く手を握り有ってその誓いを新たにした。明日のため、ジョフ大公国の為に生きて戦い抜くことを・・・。