遙かなる望郷の地へ-65◆「公国軍進撃5」
■ジョフ大公国/ジョフ平原
「・・・ルーは、非常に慎重な奴です」
マイラムが考えつつグランに上申する。
「不意を襲われたとしても、部隊を纏めて最適な方向に後退、再編に努めるでしょう」
「もっとも、あのルーが“不意を突かれた”となると、生半可な用兵を行う相手じゃない」
「同感です、フレム。唯のオークレイダーと考えない方が良いかも知れません」
「用心するにしても──戦力が足りないな、アルノ」
「グラン様。まずはルーの第一連隊が何処にいるか、把握することから始めては如何かと思います。その為には、空中から飛翔連隊に捜して貰うのか一番だと。」
フレムとアルノもマイラムの意見に頷いた。
「飛翔連隊の二人は馬より早いし、なんと言っても練度が我らとは違います。是非、ご指示を」
グランは、三人の部下の話の内容を受け、暫く思案した。
“話がどんどん厄介になってくるな・・・その場その場での判断が重要と成ってくるわけだが、今は意見を具申してくれる人材は実にありがたい”
「判った、至急に公都へその旨を連絡してくれ。我らが動くのはその後の事だな」
暫く考えた後に、グランは言葉を追加する。
「休憩する兵士と警戒する兵士の役割は徹底させろ。なまじ全軍を緊張化に置くのも体力の無駄になる、また警戒の徹底も必要だ。 面倒な指示だが頼む」
指揮下の面々を見渡すと、グランは口端に不敵な笑みを浮かべた。