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遙かなる望郷の地へ-54◆「全軍出撃」

■ジョフ大公国/宮殿/大手門


 去りゆくトリアノン・レスコーの後ろ姿を見ながら、噛み締めるようにジャン・バルトが言う。


「我らも、遅れを取る訳には参りますまい。早速・・・」


 ジャン・バルトの言葉は、そこで不意に途切れた。先刻を上回る大歓声が、ジョフ軍から挙がった為だ。


『大公女殿下万歳っ! 大公女殿下に栄えあれっ!!』


 口々に叫びながら、騎兵も歩兵も大手門から出てくるほっそりとした姿に心からの歓声を送った。

 しずしずと白馬を進めてくると、レアランはグランの脇に立ち止まった。きっと顔を上げると、不意にグランの腕に手を置いて、もう片方の手を挙げた。再び沸き起こる大歓声。だが、それもレアランが口を開くとぴたりと止まった。


「友好国の戦士達、そしてジョフ公国の戦士達よ。我らは再び難関に直面しております。しかし、わたくしは微塵も恐れてはおりません。わたくしたちがお互いに協力し合えば、必ずやこの難関を打ち砕くことが出来るでしょう」


一度言葉を切ると、自分の思いが皆に染み渡るのを待つ。


「我が敬愛する大戦士さまと、友邦コーランドのレスコーさまの部隊が相手を寸断するまで、残る部隊はこの公都前面を護り切らねばなりません。そして、その困難な戦いを、わたくし自身が指揮いたします。戦士の皆さん、どうかわたくしに力を貸して下さい」


 大公女の言葉が終わるか、終わらないかの内に、天を突く大歓声が挙がった。彼らの敬愛して止まない大公女が、“ジョフの心”が自分たちと一緒に戦う──この事実が彼らの志気をいやが上にも奮い立たせるのであった。


「大戦士さま。ここはわたくしに任せてお行きなさい! 貴方さまとレスコーさまが包囲に成功するまで、わたくしは必ずやこの陣を支えるでしょう」


 微笑みをその表情に浮かべると、レアランはグランを見つめた。その双眸は、僅かに潤んでいるように見えた。


“流石に役者が違う”


 内心笑みを浮かべると、グランは自分に向けられた言葉に対し、相手を見つめ無言で深く頷く。


「ジャン・バルト、後のことは任せたぞ」


 言うが早いか馬首を巡らせると自軍に向けて走り出した。心は妙に晴れ渡り、あの台詞が失言だったかどうかは別としても後悔は無かった。そして既に遠ざかっているはずの人に対し一言こぼした。


「そう、終わったら・・・」


 呟きが零れる。

 そう、すべてが終わったら・・・

 颯爽と馬を駆るグランの動きに呼応し、先ずは親衛騎士団“LAG”が周りを固めた。

 その中で、グランは次席幕僚であるアルノ・カリスタンに幾つかの指示を施す。


「槍の穂先は私を含めるLAG、後は第四連隊を中心に置き重装騎士で左右を固める(コルセット)。行軍中も訓練として厳しく臨め」


 全軍の士気が上がっている以上、グランは考えている戦術が実行可能かもしれないと考えていた。紡錘陣形による敵中央突破戦術。速度こそが命だが錬度の低い第四連隊だけが頭痛の種であった。


「では出陣!」

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