遙かなる望郷の地へ-52◆「閲兵式4」
■ジョフ大公国/宮殿/大手門
『おぉぉぉっ!!!』
再び、どよめきが公都前に沸き起こった。
今度は、コーランド軍の将兵も一緒になって叫んでいる。
「流石は大戦士殿。我が軍のみならず、友軍の事も考えて下さる」
「それについては、何ら疑念ももっておりませんでしたよ」
心配性の気がある無骨な騎士に、コーランドの近衛騎士がふんわりと笑って言った。
「それでは、私は我が軍の重騎兵を率いてHORNWOODに向かいます。大戦士さま、ジャン・バルトさまもご武運を」
「貴軍の武運長久を心より祈る」
「レスコー殿、お気を付けて。ご武運を!」
馬を早駆けにさせると、トリアノン・レスコーは自軍の所に向かった。
「颯爽とした中にも優雅さを失わない──そんな、素晴らしい騎士ですな、レスコー殿は」
その後ろ姿を観ながら、噛み締めるようにジャン・バルトが言う。
他国の所属とはいえトリアノン・レスコー、そしてジャン・バルトの二人に、グランは非常に期待していた。この戦いの後に酒を酌み交わすことが楽しみでならなかった。そんなトリアノン・レスコーに対するジャン・バルトの台詞に、グランは笑いながらジャン・バルトの肩を叩いて言った。
「まだまだ我が軍では、優雅さに於いてコーランド軍には及びも付くまいよ、当然ながら俺も含めてだが」
それほど長い演説ではなかったが、グランはかなりの疲労感を覚えた。鞍の上で半ば立ち上がっていた腰を鞍に再び収めると、控える忠実なLAG騎士ジャン・バルトに気づかれないように大きく溜息をついた。
“まだ今日は半分しか終わってないのによ”
体力勝負ならまだしも、会議から此処まで精神の糸は極度に張り続けていた。
全軍に下知を下して出撃しようとした矢先に、不意に大歓声が湧き上がった。