遙かなる望郷の地へ-47◎「深まる懸念2」
■ジョフ大公国/宮殿/大広間
「・・・ふむ。」
エリアドは暫し思案した。
「・・・もし君が言うように、相手方に“夢見”がいるとすれば、その最大の目標は、必ずしもレアラン姫とは限らないと考えておいた方がいいだろうな。・・・はからずも、君自身が“答え”を言っているのだから。『“夢見の力”を妨げることが出来るのは“夢見”だけ』と。それは、“夢見”にとっての最大の敵は、“夢見”に他ならぬということだ」
そう言うと、エリアドはレムリアの白い顔をちらりと見る。
「・・・むろん、この戦いの最中、レアラン姫が倒れるようなことにでもなれば、ジョフは容易ならざぬ事態に陥るだろう。
だが・・・、相手方に“夢見”がいるのであれば、君が倒れても同じことになる。“夢見の力”に対抗することができる者がいなくなるのだからね」
“物は考えようだが、こうなるとレムリアがレアラン姫の側に着いていてくれるのは却ってありがたいかもしれぬな。相手が狙ってくるとわかっているのなら、そこに戦力を集中することができるというものだ”
「・・・レムリア。難しいことは承知の上で言うが、忘れてくれるなよ。この戦い、むろんレアラン姫に倒れてもらうわけにはゆかぬ。・・・だが、君に倒れてもらうわけにもゆかぬということだ。・・・もし危地に陥るようなことになった時には、二人が共に助かる方法を考えてくれ」
少しだけ間を置いて、呟くように続ける。
「・・・ある意味、この戦いの趨勢を決めるのは、公都前面の、その戦いということになりかねぬ。“時”が移る前に、できる限りの用意をしておかねばなるまいな。
まずは、さきほどの“放浪の戦士”殿に。そして、“龍騎聖”の御三方にも協力をお願いするとしよう。グランとレアラン姫には、この戦さの“表”で指揮を取ってもらわねばならぬ。となれば、“裏”の戦さは、我らの役どころとなろうよ。つきあってもらえるかな?」