遙かなる望郷の地へ-45◎「深まる懸念」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋→大広間
足早に部屋を出ていったグランをジャン・バルトが慌てて追った。
「わたしも、お二人とご一緒することに致しましょう」
「そうして貰えると助かります、レスコー卿」
「心得ていますよ。それでは皆さま、これにて失礼申し上げます」
朗らかに言うと、トリアノン・レスコーはグランとジャン・バルトを追って部屋を出ていった。
「さて。我も民兵の編成を急がねばならぬ。まこと恐縮ではあるが、諸卿も今後の策を講じて頂ければ幸いに思う。では、失敬する」
カイファートは大広間への案内を侍従に指示すると、部屋を出ていった。宰相の部屋に残っていた全員は、侍従に案内されて大広間に移動した。
☆ ☆ ☆
「・・・さて。どうしたものか」
大広間に移動しながら、エリアド・ムーンシャドウは状況を思案していた。
状況はめまぐるしく推移している。
“・・・ただでさえ、ややこしい状況だったというのに、輪をかけて、ややこしいことになってきているようだな”
エリアドはは肩をすくめて小さくため息をついた。
「・・・シレイナスに、サリアン・リパニアンね。シレイナスという名前の方は、どこかで聞いたことがあるような気がしないでもないが、もう1つの方は、残念ながら記憶にない名前だな」
呟くように、こう続ける。
「・・・グランには悪いと思うが、ここは多少こちらの手を貸してでも、この戦いが不必要に長く続くような事態は避けた方がよさそうだ。
・・・ヒラリーやディンジルが、“黒のアルカナ”たちに遅れを取るようなことがあるなどとは考えたくもないが、滅多に人里に現われぬという3人の“龍騎聖”ばかりか、“シレイナス”という謎の戦士までがこの地を訪れたともなれば、彼の言葉通り、容易ならざる事態が起きつつある可能性は否定できまい」
エリアドは、傍らを歩くレムリアの方を見ると、真剣な眼差しで聞く。
「君はどう思う?」
「・・・最悪の予想があります」
窓辺から、大手門前に集った軍勢を見下ろしながら、レムリアは平板な声で言った。
「その様な事態を考えたくもありませんが、現在最も危険な立場に有ろうかと思うのは、大公女さまです。あの方に何か有った場合、公都前面の防衛戦が崩壊するばかりではなく、ジョフ大公国自体の存亡に拘わるでしょう」
このようなこと、改めてあなたに言うまでも無いことですが──と沈痛な表情でレムリアは続けた。
「問題は、わたしの“夢見の力”が、使いにくくなっている点です。その事態は徐々に進行してきましたが、先程からは、予想するのが一層困難になりました。特に、公都の事を想うと、霧が掛かったようになってしまいます」
レムリアは、深く溜息を付いた。
「これは、大公女さまに密接に拘わることだと思いますの。そして──“夢見の力”を妨げることが出来るのは“夢見”だけ。恐らく、相手方には“夢見の力を持つ者”がいるでしょう」
サブタイトル途中の記号が「◆」でグラン本編、「◇」でレアラン大公女公都前面攻防戦編、「◎」で派生編となります。宜しくお願い申し上げます。