遙かなる望郷の地へ-42◆「放浪の戦士2」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
新たな侵入者に、グランは感謝した。
グラン最大の悪癖『戦いになれば嫌なことは忘れていられる』からである。
「ジャン・バルト下がれ。 そいつが用があるとすれば相手は俺だろうよ」
今までの腑抜けた感情は抜け、戦場での殺気を放出し始める。
「はっ!」
一礼して、ジャン・バルトは三歩後ろに下がり、グランに道を譲った。無論、何時でも介入できる位置を保持することは忘れない。
「悪いが俺は口の達者な奴は大嫌いでね。少なくとも味方には見えないしな」
「やれやれ。ボクに構っている暇があったら、自分のやるべき事をやった方がいいと思うけどね。まぁ、いいさ」
皮肉っぽく笑うと、グランを見やる。
「敵味方の区別くらいつけようよ。言っただろ? ボクは敵じゃない。だいたい、敵だったらキミも、ここにいる人たちも、とっくにお亡くなりになってるヨ。ねぇ、ボクにはそれくらいの実力、あるでしょ?」
最後のセリフは、ジャン・バルトに向けられたモノだった。
「くっ・・・大戦士殿。確かに小奴、腕がたちますぞ」
「認めてくれて痛み入るよ。さて、どうするかい? 大戦士さん」
斜に構えて、気怠そうに言う割には、その双眸はキラキラと輝いていた。
「・・・まぁいい、敵でない貴様が何用で此処に現れた?」
“こいつのペースに飲まれるな”
意識は危険信号を発しつつ、無視してレアラン姫を追うわけにもいかず――グランは己の殺気を鎮めつつ続けた。