遙かなる望郷の地へ-40◆「心の迷路3」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
グランは思わず一つ大きな溜息をついた。
こんな事態なのに、意外にも徐々に自分が冷静になっていくことに気がつく。
“やれやれ、次の台詞が出てきやしねぇな”
レアラン姫の言葉を「額面通り」受け取ったグランは、やや肩を落としながら沈黙を続ける。
“まぁ、言うべきことは言った事だし、駄目なら頭を掻いて御免なさいって事か・・・まさかな!”
自分で気合いを入れようと無駄な努力をするが、一向に意気が上がらない。
「・・・」
“駄目だ、俺様としたことが言葉が出ないぜ。
だが、このままじゃ不味い。後の戦闘に支障を来たす事になる。
どうするか・・・”
☆ ☆ ☆
「あ・・・」
大きく溜息を付くと、グランの表情がやるせないものに変わっていく。
後悔と自責の念が、レアランの躰の奥底まで染み通る。
必死に、必死に踏み止まろうとする──だが、心の奥から何かが溢れ出してくる。そして、その想いは滴となって瞳を潤した。
「大公女さま、ご気分でもお悪いのでしょうか?」
心配そうに LAG筆頭騎士が尋ねる。その、ジャン・バルトの言葉が引き金になったのだろうか──堰を切ったように溢れ出した涙は、早瀬となって頬を下った。
──お逃げなさい
心に響いてくるそんな言葉を感じると、溜まらず宰相の部屋から逃げるように立ち去った。