遙かなる望郷の地へ-39◆「心の迷路2」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
「・・・」
僅かに、レアランの躰は震えていた。
聞きたかった言葉を、聞かせて欲しかった相手から漸く聞けた──どんなに嬉しく思えることだろうか。どんなに喜ばしく感じられることだろうか。
・・・だが――それに応えるべき言葉を、レアランは胸の奥に封じ込めた。
顔を上げると、意を決してその致命的な言葉を紡ぐ。
「大戦士さま。今は、斯様な事を語るべき時ではありません。」
☆ ☆ ☆
胸騒ぎを覚えて、レムリアは思わず振り返った。
“えっ・・・”
打って変わって、蒼白な表情でグランに相対しているレアランを見て、思わず制止の声を上げそうになった。
「っ・・・」
とっさに口元を手で押さえると同時に、致命的な言葉が発せられるのを聞く。
“あぁ・・・どうして・・・。どうしてなの・・・”
理性ではその決断の正しさを認めながらも、感性はその理解を拒否していた。その時、はた、と思い当たる。
“もしかすると・・・。でも、そんな・・・”
夢見になる過程で身につけた自制の力を最大限に発揮して、想いが表情に表れるのを押しとどめる。
“駄目。自分が倒れるかも知れないなってことを、決して考えては駄目っ。その想いは、貴女に負の結果を招き入れることにもなりかねない・・・”
レアランの胸の痛みがレムリアの心を根底から揺さぶるのだった。