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遙かなる望郷の地へ-34◆「開戦前夜9」

■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋


「結構だ」


 筆頭騎士の発言が終わるのを待ってグランが発言した。

 流石と思わせる雰囲気と内容にグラン本人も満足していた。

 そう思いつつも、一つの質問を加える。


「今回の戦闘はやはり包囲殲滅戦に持ち込むべきか? 多勢相手にしての無勢、大きな一撃を与え壊走させる事を目的とするのではやはり甘いかな?」


 些かグランらしからぬ発言とも思えたが、ジャン・バルトは生真面目に返答した。


「寡兵である我が方が、相手方を完全に包囲殲滅することは非常に難しいでしょう。騎甲戦力にて出来得る限り相手方を混乱させ続け、その間に守備位置から前進攻撃に転じた歩兵部隊が敵軍を追撃する格好では如何かと思います。即ち、結局は相手方を壊走に追い込み、その過程で可能な限り敵戦力を減少させて元来た場所に追い戻すことが必要かと拙考致しました」


 ジャン・バルトの言葉を引き継ぐように、コーランド北遣軍司令官のトリアノン・レスコーが穏やかに発言する。


「現在の戦力と状況ですと、とるべき方策は限られているように思えます。私たちの強みは、相手方を上回る機動力があることでしょう。騎甲戦力の有効投入が、全ての鍵を握っているでしょうね」


 差し出がましい言い様ですが──と柔らかい笑みを浮かべてトリアノン・レスコーはそう結ぶ。


「ふむ──公都の城壁に寄って戦うのは下策だと言うことか。攻撃こそが最大の防御、と恵久美流公国の竜王が昔言ったと言われているが、苦境にあってこその逆転思考ということだな」


 額に縦皺を寄せて、カイファートが溜息を付いた。


「何れにせよ、騎甲戦力が包囲作戦に入るまでの暫しの間、正面を支える歩兵部隊にとって厳しい戦いになるだろうな」


 グランは唸った。一時的に、三倍もの相手を支えるのである。功囲に持ち込まれたら、逆に包囲殲滅されかねない危険性がある。


「大戦士殿。意見も出尽くしたことですし、作戦と各部隊の指揮官を決めては如何か?」


 カイファートが議論を纏めるよう一座を見回して言った。

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