遙かなる望郷の地へ-25◆「心の力2」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
「何故に、人は“強い”か──古来から、多々問われた命題でもありますな」
カイファートは、両目を細めると薄い笑みを浮かべた。
「単に腕力だけでは無い。ましてや、剣技や帯びているモノ故でも無い。真の強さは、別の所に在ろうかと思いますぞ」
その言葉に、レアランが大きく頷いた。その表情には、嬉しそうな笑みが浮かんでいる。
「“漢”たるもの、己の行くべき道こそを見失うことなかれ──私は、斯様に思っておりまする」
「“漢”たるもの・・・か」
グランは、己の能天気な発想を吹き飛ばした後に呟く。
「言うは易し、だな。特に俺のような奴の場合は如何にその能力を発揮するかが重要だと思うし、また誰のために使うかだ・・・少なくとも今の俺に迷いは無いよ」
笑顔で話をまとめると、グランは視線をレアランに向けた。
☆ ☆ ☆
レアランは黙って、皆の話を聞いていた。グランが自分の何を不甲斐なく思っているか、まだ歳若く経験の浅い彼女にははっきりとは判らなかった。
“わたくしは、側にいて下さるだけで、とても心強いのですけれども・・・”
公国民にとっても、ジョフ復興の原動力となった“大戦士”の存在を心強く感じているに違いないと思うのだが、そんな自分の考え方は思慮が浅いのだろうか──グランの表情を見ながら、少し胸が重く感じるレアランだった。
話が一段落し、グランが自分に笑顔を向けてきた。その雄々しい表情を見ていると、心の重みもすっと解消されていくかのように感じる。笑顔に微笑みを返しながら、レアランは強く想った。
“心配しないで下さいませ。貴方の笑顔は、貴方の存在はこんなにもわたくしを勇気付けてくれています。だから──御自分に自信をお持ちになって。貴方は、今でもこんなに大きな存在なのですから”
☆ ☆ ☆
グランは、レアランの微笑みに自分の内面を見透かされた思いだった。
“そうさ、俺が求める力とはたった一人を守り通せるだけでいいんだよな…もっとも国やら国民も付いてきてしまうんだが・・・まぁ、いいか!”
如何にもグラン的に考えを帰結させると、レアランに豪快な笑みを返した。