遙かなる望郷の地へ-24◆「心の力」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
「龍騎聖か。頼もしい連中が馳せ参じてくれたものだ。早急に俺も挨拶を済ませたいので段取りを頼む。・・・しかし、」
グランは宰相の顔を眺めながら、些か意地の悪い表情を浮かべて続けた。
「卿の言葉を借りれば、俺より強い連中がまた増えたと言う事だな」
笑ったつもりが苦笑いになってしまう。
「まぁ、いいさ」
“・・・相変わらずくだらない事にこだわるな俺も・・・”
心の中で、グランは苦笑いした。
☆ ☆ ☆
「御冗談を。貴公を含めて、私より強い人は、まだいくらもいますよ。」
苦虫を噛み潰したようにも見えるグランの表情に、エリアドは微かに苦笑する。
“やれやれ。また彼は、自分のことは棚にあげてしまっているのだな。ジョフに眠る“最強”の称号とその技を手にしたのは、さて、どこの誰でしたっけ、ねぇ。・・・まぁ、それにしても。”
「・・・“龍騎聖”・・・ね」
エリアドは小さく呟いた。彼の気持ちは、まだ会ったことのない3人の龍騎聖──とりわけ“剣の”と呼ばれるほどの使い手であるサッコゥ──に向いていた。
☆ ☆ ☆
エリアドの反論に、グランはしばらく自分の考えに没していた。
“まぁ奴らしい論法だが、いまの俺に奴を超えることは出来ないだろう・・・俺の知っている限り、特に身近なところではパワーでは親父に勝てず、技ではエリアドに及ばず、テクニックでは魔法を絡めたラダノワ卿の戦闘に及ばず、そしてヒラリーにも及ぶまい・・・敢えて勝る面があるとすれば『悪運の強さ』だな!”
確かに、グランには先日身に付けた秘剣がある。だが、グランには『あれ』は借り物のような気がしてならなかった。また大砲をぶっ放すような感じもありギリギリまで使うことは無いと考えていたのである。
“それに、使うときは俺流にアレンジを考えておかないとなぁ”
そう思うと、にやりと笑って言った。
「今まで知らなかったとしても、今知ってしまえばいいことさ」
それは、如何にもグラン流の考え方ではあったが・・・。