遙かなる望郷の地へ-23◆「富国強兵3」
■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋
「まぁ、悲観した話ばかりでもありますまい」
宰相カイファートは有るか無しかの苦笑いを浮かべた。グランが大公女に対してどう思っているか、大公女がグランをどう思っているか──お互いの想いを思えばこその、二人の行動だった。
「遊撃軍の増強は、第一優先で取りかかりましょう。幸い、コーランド王朝騎士団領とビセル候国が乗馬の提供をしてくれるとのことです。さすれば、あと二個連隊の編成が可能でしょう」
机の上で腕を組むと、その上に顎を載せる。
「最後になりましたが──強力な助っ人の申し出が来ております。シェリドマール流域きっての手練れ、龍騎聖の三君が、しばし当地に賓客として逗留してくれるとのことです。その間に、都に異変が起きれば、火の粉を振り払う手伝いをしよう、と申されております」
龍騎聖──水晶の霧の山脈中の、“龍泉峡”に住まう三人の龍騎士。それぞれが、剣、槍、弓の免許皆伝(Mastary)だ。滅多に人里と接触しないが、時折気まぐれにも街に短期間滞在することがあった。
「剣のサッコゥ、槍のネースビィ、そして弓のシトール。何れも、一騎当万の方々です。今の大陸で、彼らと互角に立てるのは、守護者の方々を除けば、ユーリアラス・v・ドラッヘン伯爵、ラルフ・ロビラー“龍の盾”、そして・・・」
ちらりとその方向に視線を振ると、言葉を結んだ。
「・・・魔剣士、エリアド・ムーンシャドウ。この三人だけでしょう」