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遙かなる望郷の地へ-19◆「大宰相」

■ジョフ大公国/宮殿/宰相の部屋


「これは、錚々たる顔ぶれですな」


 重々しい声とともに、鋼の様な薄蒼の瞳が部屋に入ってきた者達に注がれた。


 宰相カイファート。戦略と政略に通じた、ジョフ大公国の至宝である。僅かな年月で、ジョフを立て直しつつあるその見事な手腕は、近隣諸国にも鳴り響いていた。


「レアラン大公女殿下」


 国民が敬愛して止まない、“ジョフの心”に対しては、親愛の情を込めて優しく笑いかける。父娘ほども歳が違うこの若き大公女に対して、カイファートは非常に丁寧に接していた。大公女に反逆していた自分の過去に捕らわれず、心優しく自分を受け入れてくれたこの娘を、力の限り支えていこう──生まれ変わってジョフ復興の一助を担うことになったカイファートは、心に固く決意していたのだ。


「大戦士殿」


 次いで、戦いの中でお互いを認め在ったグランには、親しみを込めて挨拶をする。


「ムーンシャドウ卿」


 グランの友人であるエリアドには、相応の礼を込めて一礼する。


「レムリア姫殿と守護者のお二人はまだのようですな。一緒に聞いて貰う必要がありますので、今暫くお待ち申し上げよう」


 その間、お座りになってくだされ──そう言って執務机の前に用意された椅子を指し示した。


               ☆  ☆  ☆


 グランは、“大戦士殿”のくだりに違和感を感じながら、相手に悪意があるわけでは無し、釈然としないのは自分本人の問題と思いながら勧められた席に着いた。本題は主役級全員が揃ってからという事で些細な報告でも先に聞いておこうと思った。


「本題の前に幾つかの報告を頼む」


 どちらの内容を先にするか暫し考えると。


「アランの消息についてと、軍備の件だ」


 手短に質問したが、聞くほうと答えるほうではやや質と量で不親切とも言える内容だった。アランとは昔のグランの従卒で、本人に言わせると、『アランの要らぬ御節介で、えらい事になった』と。しかしレアラン姫の前では決して言わない言葉でもあったが。その元部下はジョフ陥落と前後して行方知れずとなっていた。


 また「軍備」とは復興を遂げる以上は最低限の治安維持が必要で、それは自国のものが望ましい。しかし軍備とは生産に何ら関与するものではなく、金食い虫であることも事実、無理な増強は禁物である事は重々承知していた。それだからこそ、「喜んで」この難題を宰相に任せた面もある。


 グランが欲する軍備とは、他国侵略のものではなく、侵略を食い止める常備軍でありこの国の地理と照らし合わせて相手は人間に限らず、そのようものから国と人民を守る戦力が欲しかった。そして、その中核は選りすぐられた騎兵で構成された機動戦力で、戦いの重大局面に投入できる直属部隊《LAG》であった。その部隊は特に軍規が厳しく、黒い装備で統一され遠方からでも敢えて識別できるようにしていた。


 政治や経済に無知な分、この方面に張り切ってしまうのも致し方ないと本人も思っていることであったが・・・。

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