遙かなる望郷の地へ-14◆「紫の影」
■ジョフ大公国/宮殿/大広間→廊下
グランの後を追うように、ジャンニも席を立つ。
「大公女様、グラン殿、美味しい朝餉、ご馳走様でした。では私も早速。次も一番最後ですと、“似非妖精は蚊帳の外”になりかねませんからね! それでは!」
ニコリと微笑んで少しおどけながら言うと、トレードマークの羽根付き鍔広帽子を手業でクルリと回し被りながら“水晶の霧”(Crystal Mist Moutains)の峰々を一瞥し、ファミリアのマニを伴ってカイファートの執務室へ向かう。
路すがら、ふっと先程隣席を立った彼女のことが脳裏をよぎった。
「・・・ヒラリー・・・」
何処か、この世の者ではないような儚さを秘めた麗人。そして、時空を跨ぐ聖剣“フォウチューン”を担う守護者(Warden)“紫の騎士”。
思えば初めて出会った時、彼女は華奢な身体に、傍目にも不釣合いな大剣を両の手に身体を支える杖の様にして抱きながら、歯を食いしばっていた。自身を孤独に追いやって、言うなれば危なげな感を呈しながら。
だが・・・現在は黒の守護者というパートナーを見出して以来、多少は心の安寧を得た様だ。
・・・よかった。 心からそう思う。
しかし、彼女は現在も此の世の守護者であるし、その両肩に圧し掛かる重責は、私が推し量るに及びもつかぬだろう。
先程黒の剣聖が申していた“過去の事例”、そして彼女が言っていた“ここに集っている者には自明のこと”とは何の事だろう?
そして何故・・・
退室する際に彼女が見せた、頑なな蒼い瑠璃鋼の様な瞳の焔めきは、私にそんな事を想わせた・・・。
妖精の魔法剣士、ジャンニの視点からお送りします。「紫の騎士」ヒラリーは、GA第一紀の重要なキャラクターの一人です。ヒラリーの話も何れアップできれば、と思います。