幕間 二人の少女(夏祭り後)
夏祭りを楽しんだ二人の少女は電車を降りた。一緒に夏祭りを遊んだ友人たちはここに来るまでの駅で全員下車している。
浴衣を着て下駄を履いていた時に比べると、今は嘘のように歩きやすい。なお、浴衣と下駄こそもう脱いでいるが、それに合わせて団子にした髪はそのままだ。
「良いことあった?」
「どうして?」
「ずっと嬉しそうだったから。電車で寝ちゃう前も、起きた後も」
「顔に出てた?」
「いつもと同じ。私以外にはバレてないって」
「……そうかな」
「あれ。いつもより疑り深い」
「だって、今日は……」
片方の少女が、頬を微かに染めて俯く。
「嬉し過ぎた、から」
「……! 何があったの? やっとみんなと別れたんだから教えてよ」
時刻は十一時過ぎ。普段は賑わっている駅前の百貨店も鳴りを潜めていて、静かで涼しい夜の空気が二人を包む。
夏の熱気もこの時間になると感じない。だから俯いた少女の火照りはゆっくりと冷めていき、なんとか発熱せずに済んだ。
「手……つないだ」
「!! ほんと!?」
「こんな嘘、恥ずかしくて、つけない」
「それもそっか」
予想以上の進展にもう一人の少女は驚きを隠せない。それからは、夏祭り中に何があったかを互いに話していると、やがてマンションの前に着く。
「こんな夜遅くまで外出したの久しぶり」
「うん。お腹減った」
「あはは、みうらしい」
「カップラーメンが食べたい」
「太るよって言いたいけど、みうは太らないからずるいよね」
「あやも、太ってない」
「私は気を遣ってるの」
二人は一緒にマンションに入る。エレベーターで三階に上がった。
「カップラーメン残ってたかな」
「覚えてない」
「残ってなかったら他ので我慢してね」と言いながら、少女は鍵を出す。ガチャリと解錠して、二人はそのまま同じ部屋に入っていく。
「……残って、ない」
「残念でした」
そう、少女たちは同居していた。