第四十一話 夏だ!旅行だ!京子先生だ!
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八月十七日。今日から二泊三日の旅行だ。
目的地は海だが、スケジュール的には海に入るのは二日目のみ。一度濡れた水着を着るのは嫌だからというのが一つ、のんびりとした旅行にしたいというのがもう一つの理由だ。
いつまで経っても過ぎ去ってはくれない暑さに辟易としながら、集合場所である駅前に向かう。到着した時には既に皆は集まっていた。
立也、大和、みう、舞鶴、久しぶりのモブ田。そこに俺を加えて六人の旅行である。
遊園地の時と同じメンバーだった……はずなのだが。
「……何でここにいるんすか」
一人おかしな人が混じっている。
「何か私がいたらまずいことでもあるのか?」
三十路で独身、現在婚活中の京子先生だ。
「生徒達のプライベートな旅行に先生がついてくるのは……」
「ああ?」
「何でもないっす」
麦わら帽子にサングラスと、THE・夏というような格好で京子先生は立っていた。俺達生徒よりも彼女の方が浮かれている気がする。
「でもほんと、実際何でいるんすか? 京子先生」
「福知から、今日から三日間お前たちが海に行くと聞いてな、ついてきたんだ」
「そうなんすか」
理由になっていない気もするが、あまり細かいことをツッコむと怒られてしまう。だがまあ、京子先生が増えた所で別に困ることもない。
寧ろ、なかなかユニークな人なのでこの旅行を盛り上げてくれるだろう。そう前向きに捉えることにした。
「……私を差し置いて青春を満喫などさせはしない」
何か京子先生が呟いた気もするが、聞き取れなかったことにしておこう。
「これで全員が集まったな。さあ行こうか!」
ノリノリな京子先生の先導に、俺達は苦笑しながら駅へと入った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
集合時刻は正午だった。昼飯を皆で食べようという話になっていたからだ。
駅内でテキトーに昼食を済ませ切符を買い、改札をくぐり電車に乗る。平日の昼間だったため、簡単に席に座ることが出来た。
大和や舞鶴が楽しそうに話している声を耳に、そっと目を瞑る。
既に俺は眠たかった。電車内は涼しく、昼食後+電車の心地よい揺れのダブルコンボで早くもノックアウト寸前だ。
「しりとりでもしない?」
「良いんじゃないか」
「じゃあ俺から時計回りね! 夏!」
勝手にしりとりが始まった。大和からスタートらしい。
「つな」
続けて答えたのが立也。夏を逆にしただけじゃねえか。
テキトーな立也の回答はスルーされ、モブ田、舞鶴、京子先生の順で回答が続いていく。
「納豆」
「うさぎ」
「ギュニュー特戦隊」
時代を感じさせる単語が紛れている。
「イス」
隣に座っていたみうが回答する。次は俺の番か。
眠たいが答えないわけにもいかないだろう。
「スイス」
いすにスを付けただけである。立也を非難できない程に俺もテキトーだった。
そこで一周し、最初の大和に戻って来る。
「スリ!」
「リス」
「炭」
「ミント」
「ドラゴンポール」
一人だけ回答が異質過ぎない?
「留守番」
留守番、てことは「ん」から始まる言葉か。
「ん?」
終わってんじゃねえか。いくら何でも早すぎると皆がみうの方を見る。
みうはちょっとだけ気まずそうに顔を逸らし、ぼそりと呟いた。
「……間違えた」
不覚にも可愛いと思ってしまう。大和はというと目に見えて分かるぐらいにデレデレな顔になっていた。
「みう、よわー」
「あや、うるさい」
舞鶴がみうを煽り、みうが舞鶴にムッとしたような表情を向ける。しかし基本的に舞鶴と対立する俺も今回に関しては舞鶴に同意である。
「もう一回最初からね! 伊根町の次の清水っちから! じゃあえっと、『お』で始まる言葉から」
「『お』か」
大和の促しにより再度スタートする。確かにあれで終わっても不完全燃焼だろう。
とはいえ俺の眠気もそろそろ限界で、朦朧とする頭で言うべき言葉を考える。
よし。
「おやすみなさい」
さあ、寝るか。
こうして俺達の騒がしい夏旅行が始まった。
……夏は、恋の季節である。