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ビッチの恋愛相談役  作者: ほまりん
第三章 決意編
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第三十六話 伏見家のおばあちゃん①

 時刻は正午。真夏の太陽に体力を奪われながら、俺たちはとある一軒家の前にやって来た。


 ジージージー。


 蝉が喧しく鳴いている。石堀の上でくつろいでいた猫は、俺たちにちらりと視線をやったあと気怠そうに欠伸をし体を丸めて眠り始めた。


 人慣れし過ぎている。逃げる様子を見せないその姿に、みうが釣られるように近づいていった。


 ディスティニーランドの時もアメニティに釣られていたので彼女は可愛いものに目がないらしい。


 テコテコ近寄っていたみうが背伸びをし、腕を伸ばし猫の背中を撫でる。猫はうざったそうにむくりと起き上がると、無言で石堀の向こう側に降りて行った。


「あ」


 みうがぽつんと立ち残される。名残惜しそうでもあるが、触れたことが嬉しいらしく不機嫌ではなさそうだ。


「みうー。戻って来てー」

「うん」


 舞鶴のかけ声にまた小走りでテコテコ戻って来た。改めて、本日の目的地である木造建築の家を見つめる。


 今日は立也以外の部員が揃っていた。朝早くに起き、最終打ち合わせを済ませたのちにここまで来たのだ。


 この家は伏見家の実家である。俺の住んでいる場所からは電車で二時間ほどかかるため中々遠い。


 メガネくんと久美はこんなところから毎日学校に来てるのか。


 舞鶴がインターホンを鳴らす。


 ピンポーン。


 …………。


 ガチャッ。


「やあ、いらっしゃい」

「上がるぞ」

「どうぞどうぞー」


 開かれたドアの向こうにはメガネくんと久美がいた。俺と大和が先に家に入り、抱えていた荷物を降ろす。


 荷物の中には、遊び道具やみうのお菓子が入っている。近くに銭湯があると聞いたので着替えも持って来た。


「「お邪魔しまーす」」


 荷物の重量から解放され一息つき、挨拶をした。返事は無かったが、伏見家のおばあちゃんは大分歳を取っているらしいので仕方がないことだろう。


 俺と大和は靴を脱ぎ、素足で床に登ると再び荷物を抱える。後に続くように、舞鶴とみうは家に入って来た。


「今日はよろしくね」

「ああ、任せろ」


 サプライズパーティが始まる。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 木造建築ではあったが、家の中はそこまで古びた様子はなかった。昔の土間のような間取りはなく、床もまだ新しさを感じさせる丈夫な木材で出来ていた。


 メガネくん達がこの家にやって来た時はもっと古風だったらしい。だが年月が経ち改築をしたことで、現都会の一般家庭に見られる作りに近づいたとのことだ。


 それでも縁側や、ふすまで出入りする部屋が残っていたりするので和風らしさも残っている。昔に建築されただけあって家の占める土地の面積も大きい。


「隣の家にはもう行ってきた?」

「おう。しっかり確認しておいた」

「それなら良かった。あと、おばあちゃんに会う前に伝えておきたいことがあるんだけど」

「何だ?」


 メガネくんの言葉に耳を貸した。


「うちのおばあちゃん、もう大分歳だからさ。だんだんボケ始めてきてるんだ。もしかしたら何か変なこと言うかもしれないけどあまり気にしないでね」

「ああ、分かった」

「それと僕はケンちゃんって呼ばれてるんだけどそれも気にしないで」

「……分かった」

「今僕がちゃん付けで呼ばれてるって知って笑い堪えたよね」

「べ、別に?」


 明後日の方へ目線をやり華麗にメガネくんの追求から逃れる。


 そうこうしない内にメガネくんの祖母がいるというリビングに着いた。引き戸を開け、いざ中に入る。


「おばあちゃん、さっき話してた友達が来たよ」

「あらいらっしゃい」

「「「こんにちは」」」


 もう一度挨拶をしておいた。荷物をメガネくんの指示に従い隅の方に置いておく。


 伏見家のおばあちゃんは思ったよりも元気そうな方だった。ソファに腰かけテレビを見ていたが、俺たちを見ると立ち上がりこちらへ近づいて来た。


 とてもボケているようには見えない。おばあちゃんはぽんと俺の肩に手を置く。


「ケンちゃんが友達を家に招くなんて初めてのことだねえ。しっかり客人としておもてなしするんだよ」

「俺はあなたのお孫さんじゃないです」

「あら、ごめんなさいねえ」


 前言撤回早速ボケ丸出しだ。ホッホッホとあばあちゃんは笑う。


 いやおばあちゃん、孫の顔ぐらい認識してやってくれ。俺はそもそもメガネをかけてすらいないぞ。


 彼女は次に隣にいる人物へ目を向けた。


「久美、お茶を入れてきてくれる?」

「え」


 おばあちゃんその子大和くんって言うんだ。初対面だから間違えちゃったのかな?


 自分で言ってて何だが流石にその理屈は無理がある。今度は体格はおろか性別まで違うのだ。


「い、良いよー」


 いや大和、お前までおばあちゃんに合わせる必要ないぞ。無理に声真似しようとしても気持ち悪いだけだ。


「ホッホッホ。ノリのいい子ねえ」


 ……うん?


「おばあちゃんはお茶目だなー」

「戸惑ってるから止めて上げて」

「ホッホッホ。覚えてもらえるようにばあっとアピールしとこうかと思ってねえ、婆だけに」

「……」


 なるほど。大体分かった。


「ボケ始めたってそっちの意味かよ」

「うん。うちのおばあちゃんがごめんね」


 謝ってはいるが、勘違いするように説明したメガネくんも共犯である。


 どうやら人をからかうことが好きなのは、伏見家の遺伝子のようだ。

来週以降も週に三日更新のペースを保っていきたいです。


最低でも週二で更新するつもりですが、出来そうにない場合は活動報告で連絡します。


……ポケモン、何故発売してしまったのだ。

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