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ビッチの恋愛相談役  作者: ほまりん
第三章 決意編
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第三十五話 お盆突入

「なあ、メガネくん。どうしても逆上がりじゃないとダメか?」

「ぜーはー、ぜーはー……え?」

「はっきり言って、このままだと出来るようになるか分からない。もちろんメガネくんがやりたいって言うなら俺たちは全力で支援するが、正直賭けになる」

「うーん」


 八月上旬。


 時間の合間を見つけてメガネくんの練習を見に行った日。俺は彼にそう尋ねた。


「やっぱり、逆上がりが良いかなあ」

「……どうして?」

「僕ってほら、部活入ってないじゃん? 昔から習い事をしたことすらなくてさ。何かに夢中になったことも、熱心に取り組んだことも無いんだよね。全部中途半端で……だから」


 メガネくんは汗をダクダクにかきながらも、笑顔を見せる。


「今回ぐらいは最後までやり切りたいかなって」

「そうか」

「うん」


 それ以上は何も言わなかった。メガネくんを止めようとしても、無意味だと言うことを察したからだ。


 それに、何故かその言葉を聞いた時。


「じゃ、続けるか。カッコいいこと言ってるが、おばあちゃんの誕生日に間に合わなきゃ意味ねえんだからな?」

「分かってる。よし、もう一回」


 上手くいく。不思議とそんな予感が俺にはした。


「ふんっ、あっ!」


 グギッ。


「こ、腰がああぁ」

「…………」


 やっぱり無理かもしれないっす。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 で、結局。


「出来たあ!」

「「「おおお」」」


 八月十三日の木曜日。お盆休みに入ってから最初の日。


 スタッ。


 逆上がりを成功させたメガネくんは華麗に鉄棒から降り立った。


 パチパチパチ!


 彼の偉業に皆惜しみない拍手を送る。逆上がりを成功させただけでここまで讃えられる高校生も珍しいだろう。


 お盆に入り、立也、舞鶴、みうは実家に帰省していた。今この公園にいるのは、それ以外のメンバーである。


「やったあああ!」


 メガネくんが大声を上げる所は初めて見た。彼の握り締められた拳は努力の証だ。


 陽の光に照らされている彼は、太陽に祝福されているように輝いていた。


「うう……べ、べがねぐん。マジおべでじょう」


 逆上がりの練習を一番手伝っていた大和が号泣している。メガネくん関係だけで通算三回も泣いてるな。


 大和の涙腺はかなり緩めらしい。


「兄貴が成長してあたしゃあ嬉しいよ」


 久美もまた、目元を手で拭うふりをしていた。ふりだけだが。


 何にせよ、間に合ってよかった。



「これで全部目的は達成だよな?」


 改めてメガネくんと久美に再確認する。近くのコンビニで達成記念のアイスを購入し、食べながらの談話だ。


「うん。逆上がりも出来るようになったし、久美の作ってたマフラーも完成した……んだよね? そういえば僕まだ現物見てない」

「今日の朝だしね。鞄に入ってるから後で見せるよ」

「分かった。それと、WINEでも言ったけどお金も昨日貯め終わって、お盆休みに入る前にギリギリ買えたからそっちの方も大丈夫」

「なら良かった」


 とりあえず一安心だ。


「こっからは、お悩み解決部の皆に頑張ってもらわなきゃねー」

「だな。ほんとは下見しておきてえんだけど……」

「サプライズだし、それは無理かな。でもそこまで広くないし大丈夫だと思う」

「なら良いんだが」


 メガネくんの言葉を信じる。


「とりあえず明日、舞鶴とみうが戻ってくるからその時にまた当日の段取り話すか」

「そうだね」

「……なあ、どんぐらいあるんだ?」

「何のこ……ああ」


 メガネくんは質問を言い終える前に気づいたらしい。


「大量にある」

「……まあ一つの庭を埋め尽くすんだしな。どんぐらい時間かかんだろ」

「頑張ってねー」

「他人事だな」

「そんなことないよー」


 久美はアハハと笑うとアイスを一口食べた。流石カリカリ君という名前なだけあり、カリッと良い音がなる。


「ねえ、あやちゃんとみうちゃんって仲良いの?」

「どうした急に」

「いや、何となく」


 カリッ。


「気になってさ」

「そうか。……まあ仲は良い方だと思う」

「やっぱり」


 舞鶴のみうに対する態度を見てると察することが出来る。それは他のどの人間に見せるものとも違うということに最近気づいた。


 最初はただの友達関係なのだろうと思っていたが、どうやら親友と呼べる仲らしい。みうの反応は基本薄いので、みうがどう思っているのかは分からないが。


「久美、何か企んでないよね?」

「兄貴は心配性だねー。そんなことないよ」

「久美の言葉ほど軽いものもそうないから、信用出来ないかな」

「ソンナー」


 カリカリ君を食べ終える。カリッと音を鳴らせていたカリカリ君も、時間が経ち溶けてきたのか最後はシャリッとした音だった。


「じゃあそろそろ帰るか」

「良い時間だしね。でも最後にもう一度だけ逆上がりしとこうかな」

「お、兄貴。いけいけー!」


 メガネくんは鉄棒の前に立ち、深呼吸をすると鉄棒を手で握りしめた。そのまま今まで出来なかったのが嘘のように、簡単に逆上がりを成功させる。


「完璧だな」

「うん」

「おい、大和。帰るぞ」

「……はっ! おっけー」


 そしてその日の練習は終わった。メガネくんが初成功した時からずっと感慨にふけっていた大和に声をかけ、各々の家に帰宅する。


 翌日。


 舞鶴とみうが戻って来たとの連絡が入る。時刻は午後一時だ。


 早いっすね二人とも。


 昨日の朝に実家へ出発し、今日の昼には戻って来た。正に俊足である。


 その早さで家族団欒の時間はあったのだろうか。疑問もそこそこに、その日は昼の三時頃に集まった。


 段取りだけ話し合い、解散とする。そして更に翌日。


 作戦決行の日がやって来た。

明日、ポケモンに時間を奪われなければ更新します……

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