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ビッチの恋愛相談役  作者: ほまりん
第三章 決意編
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第二十六話 伏見久美

 七月に入るとすぐ、テストの時期がやって来る。お見合いの手助けを頼まれた翌週の月曜日、明日からテスト一週間前かと溜息をついた。


 お見合いがどうなったのか。それは神のみぞ知るという奴だ。俺に分かるのは、京子先生の国語の授業が急に自習に変わったことぐらいである。


 遊園地に行ったのが、前回のテスト最終日だったことを思い出す。


「時間が経つのは速えな……」


 誰にも聞こえない様に呟かれた俺の声は、開かれた窓から飛び出し、外の空気と溶け込んだ。


 以前は、一ヶ月はもっと長かった様な気がする。



「勉強を教えて欲しいの!」


 テスト前最後の部活動。珍しく普通の相談者が来たと思えばそんなことを頼まれた。


「それはいいが、どうして俺達に頼むんだ? 友達に教えて貰うってのが一番手っ取り早い気がするんだが……」


 勉強が出来ないのも、立派な生徒の悩みである。相談を拒もうとは思わないが、わざわざ「お悩み解決部」に足を運ぶ程のことだろうか。


「この部活の部長が、勉強出来るって聞いたから」

「それでか」


 部長とは当然俺のことだ。俺のテストの点数は確かに高い。


 前回のテストは学年で三位だった。


「分かった。依頼を受理しよう。教えるのはあんただけで良いのか?」

「うん。私の友達は自分で勉強するって」


 それならば楽そうだ。人数が多ければ、それだけ手が回らなくなる。


 自分の分の勉強もあるので、部活で頼まれたからとあまり時間を割く訳にもいかない。


「いつにする? 俺はテストまでならいつでも空いてるが」

「私も空いてる。もし、清水……って言うんだよね? が、良ければ今日からでも始めたいかな」

「了解。名前を教えてくれ」

伏見久美ふしみくみ。宜しく」


 どこがで聞いた名字だなと思う。


「保健の先生の妹よ」

「マジか」


 確かに胸のサイズが、血のつながりを証明していた。


「場所は、どうすっかな」

「清水の家は無理なの?」

「俺の家?」

「うん」

「……それはまずいだろ」


 初対面の男子の家ですよ?


「別にあんたなら信用出来そうだし」

「その信用はどっから来るんだ?」

「女子に手出す度胸が無さそう」

「ごもっともです」


 反論の余地もない。


「じゃあそういうことで。部活が終わるまで私はここにいるね。終わったら一緒に清水の家に行こ」


 話は片付いた。現在午後四時なので、伏見はまだ二時間はここに居ることになる。


 彼女は時間を潰す為にと、部室に置かれた漫画を読み始めた。


 いや、今勉強しろよ。


 そう思ったが、勉強の為にテーブルを占領されるのも、それはそれで相談客が来た時に困るので口を出さないことにした。


 少しして。


「……私も行く」

「へ?」


 話の一部始終を聞いていた伊根町が、突然言い出した。


「私も清水の家で勉強する」


 決心は固いらしく、表情がグッとなっている……ような気がする。


「まあ俺は構わねえけど、伏見次第だな。伏見、良いか?」

「うん?」


 伏見は漫画を読む手を止め、顔を上げた。俺の顔を見た後に、伊根町の顔を確認する。


 伏見は少しばかり伊根町と目を合わせた後、にこっと笑った。


「私は良いよー。清水と二人ってのもつまらなそうだし」

「おい」


 伏見は、しししと笑い、漫画を読む手を再開した。


「清水ー」

「何だ?」

「これ、おもしろいね」


 伏見は読んでいる漫画は、俺のお気に入りの一作だ。


「だろ?」

「うん、本当に」


「おもしろい」と、伏見は上機嫌でページをパラリとめくった。

次回の更新は金曜日です。


キャラが多くなって来たので、登場人物の纏めを自分用に作るかもです。

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