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ビッチの恋愛相談役  作者: ほまりん
プロローグ
1/75

第一話 始まりはいつも突然に

「いつも悪いな、清水」

「そう思うなら今度からは先生がクラスまで持って来てください」

「ああ?」

「何でもないっす」


 つい、思っていたことを口に出してしまった。先生の顔が凶暴に歪む。


 丹波京子、先生の名前だ。この先生、顔は良いのだが、がさつだし怖いしとにかく残念だ。


 結婚できないといつも嘆いているが自業自得だと思う。


 今俺がここにいるのは京子先生にクラスの配布物を取りに来いと言われたためだ。配布物を受けとり、京子先生の怒りを背に受け、そそくさと職員室を後にした。



 俺の名前は清水和夫。高校二年生で彼女いない歴=年齢の帰宅部、典型的なスクールカースト底辺勢である。


 普段から一人で学園生活を送っており、上記のステータスにぼっち属性が付与されて、いよいよ取り返しのつかない事態になっているのが現状だ。


 だが俺は別にコミュ障という訳ではない。彼女はともかく友達はわざわざ作ろうとしていないだけだ。


 悲しくはない。その気になれば、友達の一人や二人、作ることは出来る、はず……だよな?



 クラスに戻ると、いつものように人気者集団が集まって騒いでいるのが目に入った。


 その集団の中心にいるのは学校一のイケメン、天橋立也あまばしりつやだ。成績優秀、運動神経抜群、会話も面白く、気遣いも出来る。


 天は二物を与えずとか言うが、こいつは三つも四つも与えられている。ついでに立派な一物も……げふんげふん。


 騒がしい彼らの横を通り過ぎ、最前列の机に順番に配布物を並べていく。後は勝手に生徒が後ろへ流していくだろう。


「天橋くんは、もうテスト勉強始めてる?」

「うーん、少しだけ、かな」

「そうなんだ……。良かったら今度、一緒に勉強会しない?」

「いいよ、いつにする?」


 勉強会の提案をしたのが、舞鶴彩。これまたかなりの美顔をしており、天橋と共にクラスを華やかにしていた。


 いつも舞鶴は積極的に天橋にアピールをしている為、彼女が天橋のことを好きなのは遠目に見ても分かる。


 だが舞鶴は他の男にも色目を使うので、陰で女子達がビッチだとか何とか言っていた。顔が良いから妬まれているのだろう。


 なお、胸の方は皆無といっても過言は……


「!?」


 殺気を感じた。あまり触れないようにしよう。


 配布物を並べ終え、窓際にある自分の席に着く。授業はもう終わっており、後はHRが始まるのを待つだけだ。


 現在、他のクラスメイト達は各々のグループで集まって話しているが、俺の周りには誰も来ない。いつもの光景である。


 ぼーっと窓の外を眺めた。今日は晴れているなと、そんなことを一人呟きながら、段々とテストが近づいて来ていることを憂いていた。



「これでHRを終わります」


 HRが終わる。クラスの全員が、解放されたように席から立ち上がり始めた。


「バイバーイ」

「部活頑張れよー」

「やっと家に帰れるううう」


 俺も席を立った。学生鞄を肩にかけ、スタスタと教室の外を目指す。


「立也は今日も忙しいの?」

「ああ、悪い」

「そっかー、じゃねっ」

「おう、ばいばい」


 教室を出る間際、そんな会話が聞こえた。


 ちらりと横目で様子を伺うと、残念そうにしてるチャラ男と帰り支度を始める天橋、そして天橋を何やら危機感に満ちた表情で見つめる舞鶴の姿があった。


 何故舞鶴が顔に焦りを浮かべているのかはよく分からないが、特に自分には関係ないのでスルーして教室を出た。


 この時、少しでも気に留めていたら何か変わっていたのかもしれない。



「ふわぁ……」


 まだ眠い。


 放課後帰り道、帰宅部に所属する俺は、今日も部活動を全うすべく下校道を歩いていた。


「眠そうだな」

「ああ。逆に何でお前は眠くないんだ?」


 隣を歩く、超絶イケメンにぼやく。今日はこいつの所属するサッカー部が休みなので、共に下校している。


「うーん、どうしてだろうね」


 苦笑いを浮かべて首を傾げる。仕草の一つ一つがカッコよく見えるからイケメンはすごい。


 俺がやると女子が「キモっ」で終わりだ。


「カズはもうテスト勉強始めてるのか?」

「まだだ。お前は少し始めてるんだろ」

「どうして知ってるんだ?」

「さっき舞鶴と話してたの聞いた」

「盗み聞きとはタチが悪い」


 今の会話で分かっただろう。そう俺の隣を歩くこいつは


「お前達の声がデカすぎんだよ」

「ははっ」


 学校一のイケメン、天橋立也だ。



 クラスで浮いており、友達も皆無の超絶ぼっちである俺と。


 学校一のイケメンで、クラスの中心人物になっている立也とでは。


 普通なら友達では無いだろうし、それどころかクラスメイトという共通点以外接点も無さそうなもんだ。


 事実、学校にいる間はお互いあまり関わらないようにしている。俺みたいな奴と立也のような人気者が絡んでいると色々と周りがうるさそうだからだ。


 後はもうこれ以上立也と一緒に居ても何も刺激が無さそうだという理由もある。こいつとは小学校の頃から一緒だ、流石に飽きた。


 そんな訳で俺と立也という、一見対岸に位置してそうな二人の関係は


「じゃ、また明日」

「明日もお前のイケメン面見ねえといけねえの?」

「カズも顔は悪く無いと思うけど」

「てめえは俺を怒らせた」


 親友と言おうとしたが前言撤回。こいつは正真正銘俺の敵だ。


 イケメンに顔が良いと言われるとか煽られてるようにしか聞こえねぇ。


「まあいい、またな」

「ああ、ばいばい」


 さ、帰ってアニメでも見るか。



 翌日、登校直後の校庭にて。


「清水、ちょっと来て」

「え、めんど「来い」はい分かりました」


 命令して、俺の腕を掴み引っ張って行くのは舞鶴。ぐいぐいと、人目のつかない体育館の裏まで連れてこられる。


「急に何の用だ?」

「清水、あんた」


 舞鶴の表情は照れている様子もなく、どうやら告白という訳では無いらしい。一体何だと言うのだろうか。


「天橋くんと、仲良いの?」

「は?」


 思わず、間抜けな声がこぼれてしまった。

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