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国狼  作者: 壇狩坊
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     07/20 PM3:00


そして、そこには八人が残った。

 

 国狼――

 国に準ずる職業として、最も権威、名誉、そして執行力があるとして名高い聖職。

 数多もの人間が、その聖職を求め、集い、競っては振り落とされる。

 そして今。張り詰めて、張り詰めたこの一室に。

 八人が、残った。

(次で、最後かァ…)

 残留した八人の内、序列四位で勝ち上がった、鎌ヶ谷宗太は小さく息を吐いた。

 集められた八人は、準最終総合国狼試験において主席から八席までを埋めた精鋭。

 視界に入る七人の中の誰が一位なのかは分からない。

 鎌ヶ谷とて、自分が四位だということを知ったのはつい数分前のことであり、目の前にいる七人の中に、三人の上がおり、四人の下がいる、というのはあまり意識しづらいことではあった。

 張り詰めた、この空気。ただ一つとして、誰も音を立てたりはしない。

「よくここまで勝ち残った」

 ただ平然と、口端を歪めて、彼は告げる。

 内閣総理大臣だ。そして、その隣にいるのは国の象徴、天皇だ。

「この中から、今年は四人が名誉ある国狼へと成り上がる」

 胸が、跳ねた。

 今から、この中から更に半分へと人数を削られるのだ。

(凌ぎを削り合うってかァ)

 鎌ヶ谷は、ヒッ、と一人口端を上げた。

「主席、神斎夜山」

 告げられた名に、反応を示すものは一人としていない。

 当たり前だ。これから潰し合うというのにわざわざ自分の身元を晒す真似をするような愚か者はここまで勝ち上がることはない。

「第二位、浪白渉平。三位、カウス・クラウス」

 三位に突然、そのような洋語が含まれていることに妙な違和感を感じ、鎌ヶ谷は周りをチラリと一瞥すると、確かに一人、髪を金色に染め上げたショートカットヘアの黒人女性が一人、そこには立っていた。

「四位、鎌ヶ谷宗太。五位、更木騎兵」

 自身の名を呼ばれ、たしかに自分が選出されたことを、改めて実感する。

「六位、沼木心花。七位、古海古咲」

 おそらく、女性であろうその名前に周りを見ると、確かに女性らしき面影を浮かべている人間は半数である四人を占めていた。

 憶測でしか無いが、男の四人は既に名を呼ばれている。つまり八位の人間は女だ。

「八位…」

 その後。 

 ――皆の視線は、ただ一人のあどけない少女に向けられた。

 そして、鎌ヶ谷は決して変わることのない決意を、胸に秘めるのだ。

(ぜってェに、国狼になってやる)

 その為なら、決して手段など選ばない、と。

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