ミルクチョコレートの場合
ミルクチョコレート。
それはチョコレートに乳製品を混ぜた、滑らかな舌触りが特徴の、クリーミーな風味と濃厚な甘みを持ち合わせたチョコレートである。
みるくの趣味はデコレーション。クリームで何でもデコレートしてしまう。
そして、没頭すると他が目に入らなくなる、凝り性であった。
「みるくー」
「…………」
「なー」
「…………」
「なーってば!」
「…………」
先程からみるくは目の前のデコレートに夢中。
ショートケーキおばさんから、デコレーションのリメイクを頼まれたのだ。
そのためみるくに会いに来たチョコレート騎手は、もう小一時間はこうしてお預けをくらっている。
彼の我慢は限界に達していた。
「みるく」
みるくを呼ぶ声色が変わる。
「んー?」
それに気付いたみるくは、微かに返事をした。しかし作業の手は止めない。
チョコレート騎手は、ぐいっと無理矢理みるくの顔を引き寄せた。
「…………」
「いい加減こっち見ろって」
低い声。
真剣な眼差し。
長い前髪のかかる切れ長なその目は、切なげに揺れていた。
「チョコレート……」
みるくの大きな瞳が、やっとチョコレート騎手を捉える。
「君もそんなにデコレーションして欲しかったの?」
「……へ?」
みるくが可愛く首を傾げて聞く。
思ってもいなかった言葉に一瞬思考が止まったその隙に、みるくは自分よりも一回り大きいチョコレート騎手を押し倒した。
「だったら早く言えばいいのに」
みるくはチョコレート騎手の頬にクリームを塗ると、ペロリと舐める。
「う、わ……」
あっという間に二人はクリームまみれ。
そのままみるくはチョコレート騎手の細くて長い指を丁寧に舐めた。
「欲しいの……?」
そう聞くと、みるくはコクリと頷いた。
「こっち向いて」
上体を起こしたチョコレート騎手はみるくを自分の上に向かい合わせに座らせた。
「……ッ、あま、」
唇を重ねると、甘さがどんどん溶け合っていく。
その余韻に浸る間もなく、チョコレート騎手の指が弄ぶ。
「……ッ、はぁ、ん!」
「さっき無視したお仕置き」
「そ、んなに……かき混ぜたら、泡立っちゃう、よ……」
みるくの潤んだ目が、チョコレート騎手を見つめる。
その瞳に自分が映っているのを見て、チョコレート騎手は満足そうに笑った。
こうして甘くとろけるミルクチョコレートが出来上がりました。
どうぞ、召し上がれ。