意外な一面
客間に戻ろうとオレは、ゆっくりと階段を降りた。階下に着きと後ろから足音がして振り返った。
詩織が慌てた様子で何かを背に隠した。
隠されたのが気になって。
「今、何か隠さなかったか?」
オレが聞くと。
「何でもないよ」
目が泳いでて、誤魔化しきれてない。
「嘘だ!!」
オレは、実力行使に出ようと詩織の腕を無理矢理押さえ、手にしているものを取り上げようとした。
すると。
「ごめん。実は、在校生挨拶を考えていたんだ。だから、今護に見せるわけにはいかないよ」
って、とても言いづらそうに詩織が言う。
「エッ…。詩織が代表なのか?」
オレは、驚きを隠せなかった。っていうのもそもそも在校生挨拶事態に興味なかったし、それが生徒会長の役目だったのかと今更ながら思い知らされたのだ。
「うん。毎年、生徒会長が行ってるみたいだよ」
詩織が知らなかったのって顔をしながらオレを見る。
「そっか…。仕方ないか…。じゃあ、お休み」
オレは、そう言うと部屋に戻った。
まさか、代表挨拶が詩織だなんて…思いもしなかった。
はぁ…。
落ち込んでる場合じゃないか。
オレは、それを聞く立場なんだよなぁ。
彼女の一生懸命頑張ってる姿が見えるのは、オレは正直嬉しい。それが、学校での彼女の頑張りを見届ける最後の瞬間なんだ。
オレは、少し寂しさを感じた。
翌朝。
カーテンから溢れる光で目が覚めた。
部屋の外が、何やら騒がしかった。
オレは着替えを済ますと部屋を出た。
リビングに行くと詩織が慌ただしく動いていた。
「何、慌ててるんだ?」
そんな詩織に声をかけた。
「おはよう。うん、バイトの時間に遅れそうなの。それより、足、大丈夫?」
ってオレの心配をしてくれる。
「何とか、腫れは引いてきてるんだが、痛みがとれないんだ」
オレがそう答えると詩織は、心配そうな顔をする。
「護君もご飯食べる」
詩織との会話を遮るように詩織の母親が声をかけてきた。
「はい、頂きます」
オレは、そう返事した。
「詩織。ゆっくり食べてる時間無いでしょ」
その言葉に慌て出す詩織。
「ご馳走様」
詩織が手を合わせてそう言ったかと思ったら、食器を片付け、鞄を掴むと脱兎のように。
「いってきまーす」
と出ていった。
つい笑いが込み上げた。
「ごめんね、せわしい子で」
詩織の母親も苦笑してる。
「いいえ。そういうところも含めて、好きですから」
って、答えていた。