隆弥さんの弱点?
部屋に戻り、治療費をまだ払っていなかった事に気付き、財布を持って隆弥さんの部屋に向かった。
二階に上がり、階段そばの部屋をコンコンとノックした。
「誰?」
中から、隆弥さんの警戒した声。
「オレ、護です」
そう言うと。
「入って来いよ」
隆弥さんの許しを得て中に入る。
すると、この間と同じ光景が、目に入った。
「何やってるんですか?」
思わず聞いていた。
「どうもな、テスト作るの苦手なんだよ」
って、眉間にシワを寄せて、悪戦苦闘してる隆弥さん。
「オレが手伝っても大丈夫ですか?」
そう申し出ると。
「ありがたい。で、護の用は何だ?」
隆弥さんがオレの方を向いて言う。
「治療費、まだ払っていなかったのを思い出したので…」
オレが、申し訳なく言うと。
「あぁ、そうだったな」
隆弥さんが、財布から領収書を取りだし。
「ほら、領収書」
ってオレに渡してきた。
オレは、金額を見て財布からお金を取りだし、隆弥さんに渡す。
「丁度だな。…で、俺の問題は、ここなんだよ」
そう言って、隆弥さんがテスト用紙をオレに見せてきた。
オレは、それを見て頭をふる回転させるのだった。
「サンキュー、助かった」
あれから二時間かかって、テストを完成させた。
「いいえ。勉強になりました」
オレは、そう言って頭を下げた。
「そっか。護も教師を目指してたんだったな」
隆弥さんが、思い出したように言う。
「はい。こうやって、テストを作るんだって、勉強になりました」
「で、この事は、誰にも言ってないだろうな?」
塾でバイトしてることだよな。
「言ってないですよ。それに誰もそんな事聞いてこないですし…」
オレは、そう答えると隆弥さんが、安心した顔をする。
「悪いな。親にはコンビニのバイトだって、言ってあるからさぁ。下手に言えなくて…な」
隆弥さんが、親に本当の事を言わずにバイトしてるなんて、意外だなぁ。
「じゃあ、オレはこれで…」
オレは、それだけ告げて、部屋を後にした。