夕飯…②
餃子の皮に具を置いて包んでいく。
単純な作業なのに詩織と一緒にやれるだけで、こんなにも心踊るもんなのか?
オレは、詩織に目をやる。
悪戦苦闘してる彼女の姿がまた、愛しくて抱き締めたくなる。
「護の凄く綺麗…」
詩織がオレの手元を見つめていた。
皿には、オレが包んだものと詩織が包んだものとが並ぶ。
詩織のは、お世辞にも綺麗とは程遠い。
「こんなのコツさえ掴めば、簡単だよ」
オレは、自分の手を止めて、詩織に丁寧に教えた。
詩織は、オレが教えた通りに手を動かす。
やや不格好だが、さっきよりはましになってきた。
数をこなしていくうちに詩織の作ったのも綺麗になった。
「やればできるじゃん」
オレが誉めると嬉しそうに照れ笑いをする彼女。
と思ったら、顔色が曇り出した。
最初に作ったのが気になるのか…。
「大丈夫。ちゃんと食べてあげるから…」
小声で、詩織に伝えると。
「エスパーみたい…」
詩織が小声で言う。
「エッ…」
不思議に思い、詩織を見た。
詩織が、戸惑いながらオレを見ていた。
「さて、包み終わった?」
詩織のお母さんが、こちらに振り返って聞いてきた。
皿に並べられた包み終わったものを見て。
「護君。本当に上手だね。それに比べて詩織の不格好なこと」
呆れたように言う母親の言葉に詩織が落ち込む。
「どうせ、私は下手ですよ」
口を尖らせ、僻む。
そんな仕草も、可愛らしい。
「「ただいま」」
玄関から隆弥さんと勝弥さんの声が、聞こえてきた。
「お帰り。手を洗ってらっしゃい」
母親の言葉に二人は、洗面所に向かって行った。
「お父さんの分の餃子だけ冷蔵庫に仕舞って、ホットプレートをそこに置くから、リビングニそこのやつ持ってってくれる」
詩織が、餃子が載ってる皿をリビングニ運んでいく。
戻ってくる時には、そに手に古新聞を持っていた。
それをダイニングテーブルに広げていた。
その上にホットプレートが準備された。
準備をしている間に二人がダイニングに現れた。
「なんだ。今日は、餃子か…」
ガッカリした声がダイニングに響く。
「ふーんだ。じゃあ、食べなきゃいいじゃん」
詩織が頬膨らませる。
「その言い方は、詩織が作ったんだな。それなら食べないとな」
隆弥さん、勝弥さんが詩織を挟んで頭を交互に撫でた。
「残念でした。私と護で作ったんです」
詩織が、どや顔をしながら言う。
何で、詩織が威張ってるんだ?
「エッ…、護が!」
二人がビックリしてる。
「はい。オレも手伝いました」
オレは軽く頷いた。って言うか、そこまで驚かなくても…。
「ほら、餃子焼くから持ってきて」
詩織が、母親の言葉に皿を取りに行く。
大皿を抱えて戻ってきた詩織。
「この形が崩れてるのが詩織のだな」
プレイトに並べながら、隆弥さんが鋭く突っ込む。
「どうせ、不格好だよ」
拗ねだす詩織。
「大丈夫、味は変わらない」
オレは、フォローしたつもりで言ったのだが…。
「それ、慰めになってない」
更に拗ね出した。
「そう膨れるなって。後でいいものやるから」
隆弥さんが、詩織を宥める。
その言葉で詩織の機嫌が直った。
「さぁ、焼けたわよ。食べなさい」
このやり取りをニコヤカに見守る母親。
「母さんは、食べないの?」
詩織が不思議そうな顔をして聞いてる。
「うん。母さんは父さんと食べるからいいの…」
って返事を返された詩織は、納得いったのか。
「じゃあ、お先に頂きます」
詩織がそう言い出した。
「どうぞ」
嬉しそうな顔の母親。
何かあったのだろうか?
そう思いながら、オレも餃子に手を伸ばした。