交わる想い
「護。月曜日、学校に行くの?」
詩織が、心配そうに聞いてくる。
「何で?」
オレは逆に聞き返した。
行っては行けないのか?
「だって、三年生は自由登校の筈でしょ。無理してでなくてもいいじゃんか」
詩織の心配そうな顔と寂しそうな瞳がオレを捕らえる。
「そうだけど…。オレは、お前の事が心配だから、行くよ」
オレは、安心するように言ったのだが。
「護、あのね。さっき、護の制服を取りに戻ったときに、佐久間くんと浅井くん、それと雪菜ちゃんに言っちゃった」
不安な顔をする詩織。
何を言ったんだ?
「言ったって何を?」
続きを促す。
「私達の関係を話しちゃった」
って、顔を赤らめてオレの顔色を伺うように見てくる詩織。
「婚約してるって事をか?」
オレは、詩織の目を見て聞き返す。
詩織が、ゆっくりと頷く。
って言うか、詩織が堂々と話すって方に驚いたけど…。
「ごめんなさい。どうしても隠しきれなかった」
詩織の肩が堕ちて、不安気にオレの顔を見てくる。
「…ハァ…。いいよ。気にするな。本当の事だからな」
オレは微笑みながらそう告げて、詩織の頭を撫でた。
やっと、言えたんだな。
自分の口から、伝えれたんだ。
だったら、怒れない。
「護なら、そう言ってくれると思った」
って、そんな安心しきった顔をして抱きついてきたら、余計に怒れない。
そんな詩織を抱き締め。
「本当、お前は可愛いな」
って呟いて、頭にキスを落とす。
「護の前だけだよ。こんなに甘えれる」
詩織が、満面の笑みを浮かべて言う。
ちょ…ッと、それ反則だって…。
オレの腕の中で顔を上げ、上目使いって……。
狙ってやってるんじゃないかって思えてくる。
「そっか…。なら、オレも甘えようかなぁ…」
オレはそう告げて、詩織の肩に頭を載せた。
赤くなってるだろう顔を隠すために…。
「今日は、ごめんな。せっかく楽しみにしていたデートだったのに…。詩織の手前、意地を張ってたから、今頃になって恥ずかしくなってきた」
詩織の顔が見れない。
申し訳ない思いばかりで…。
「いいよ、デートは何時でも出来るから。それより、護の事が心配。辛かったら、辛いって言って欲しいよ。私達、隠し事無しって約束でしょ」
真剣みの帯びた声で言う詩織。
「そうだけど…。でも、好きな娘には、見せたくない姿だから…」
こんな情けない姿を見せるつもり無かったんだがな。
「そうかもしれないけど、私はどんな姿だって、護だって思うもん」
詩織が、オレの顔を覗き込んでくる。
「詩織…」
彼女には、負けたよ。
そこまで思ってくれてるなんて、男冥利につきるな。
オレは、もう一度詩織を抱き締め直した。
詩織が、オレの胸に顔を埋めてくる。
甘えるように…。
「なぁ、詩織?」
「何?」
「オレ、邪魔してないか?…その…」
オレは、何となく聞いていた。
詩織にとって、オレは重荷になってるんじゃないかって…。
詩織は、そんなオレの想いを感じ取ったのか。
「邪魔じゃないよ。私は、居てくれる方が安心するし、相談に乗ってもらえるもの。悩んだ時は、色々話せればって思ってるんだ」
エヘヘって、照れ隠しの笑顔浮かべて言う詩織。
嬉しいこといってくれるじゃん。
「詩織……。やっぱり、お前が好きだ!」
思わず抱き締めていた腕に力が籠ってしまった。
そんなオレの背中に詩織が腕を回してきた。
「護。私も大好き」
詩織の言葉が、優しく耳に届く。
オレは、そんな詩織の唇を奪う。
次第に深くなっていく口付け。
「ダメだ。止まらない…」
オレは、詩織をベッドに押し倒した。