屈辱
「玉城。足見せてみろ」
後輩と入れ代わるように監督が言う。
冷やしてるところの氷を詩織が、退かす。
「酷くやられたな。立てるか?」
オレは、言われるまま立ち上がる。
「その場で、足踏みしてみろ」
オレは、足を交互に踏みしめる。
何度か踏みしめてるうちに足が痛み出す。
「っ……」
「これは、かなり酷いな。念のために病院に行った方がいいだろ」
監督が、顰めっ面で言う。
「これぐらい、大丈夫です」
って言いながら、背中を冷や汗が流れていく。
「駄目だ。病院に行ってこい。君、玉城の事頼むな」
監督が、詩織の方に視線を送った。
「わかりました」
詩織は、そう言うが早いが、オレに肩を貸してくれる。
弱ったなぁ……。
彼女に肩を借りることになるとは……。
「詩織、鞄」
状況を把握してたかのように、里沙ちゃんが詩織の鞄を差し出してる。
「ありがとう」
詩織は、鞄を受けとると携帯を取り出してかけ出した。
まさかとは思うが……。
「隆弥兄呼ぶからね」
詩織の有無を言わせない強い言い回し。
あーあ。
隆弥さんに迷惑かけることになるとは……。
これで、二回目だよな。
あの時は、本当にお世話になったって思う。
朦朧としてる自分を介抱してくれたのが、他ならぬ隆弥さんだったんだよな。
まさか、再び手間をかけさせることになるとは…。
オレの胸の内と反して、詩織の声が聞こえてくる。
「隆弥兄。護が、負傷して動けないから、迎えに来て欲しいんだけど」
詩織が、淡々と話してる。
情け無さすぎる。
「じゃあ、妹が大の男に肩を貸しながら、病院に連れていけばいいのかな?その途中で、倒れてもいいの?」
詩織、それ脅しだから……。
隆弥さんにとって、詩織は大切な妹なんだからそれを言ったら不味いだろうが……。
「うん。ありがとう」
詩織が、笑顔でいってるのを見ると了承してくれたみたいだ。
「隆弥さん、何だって?」
オレは、気になって声をかけた。
「来てくれるって。そうだ、護の制服どうする?取りに行ってこようか?」
「いいよ。後で取りに来れば…」
オレは、遠慮して言う。
その言葉に詩織が頷くと。
「取り敢えず、正門まで移動しようか…」
そう告げられ。
「そうだな」
と答え、詩織に肩を借りながら、正門に向かった。




