ゲーム 後半
後半戦に入っても相変わらずアイツは、オレのマークについている。
しかも、詩織が言った通り、後半戦に入ってからの方が、動きがいい。
「護。ファイト」
詩織の一段と大きい声援にヤツの動きが、一瞬躊躇いが生まれた。
オレは、そこをつくようにヤツを抜いた。
……が、直ぐに追い付かれてしまう。
くそーー。
何か、策はないのか?
オレは、ヤツの動きを観察する。
ヤツは、オレの動きを完全には、把握してないはずだ。
だったら、オレはヤツの裏を掻くしかない。
直進に走り抜けると見せかけて、踵を返すように戻り、そのまま方向転換する。
それにはヤツは、思ってもいなかった行動だったらしく、着いてこれなかった。
フリーになったオレにパスが通る。
オレは、ディフェンダーを十分に引き付けてから、センタリングをあげて、後輩にパスする。
その時だった。
オレの利き脚に痛みが走った。
フと見ると相手の爪先が、オレの脹ら脛に直撃していた。
「…っ……」
そいつは、詫びを入れるどころか、してやったり顔をしてる。
……。
これは、ヤバイかも……。
歩くのもキツイか……。
オレは、誰にも気付かれないように歩く。
…が、やはり痛みが身体中に駆け巡る。
「…っ……」
誰にも悟られないようにしていたのだが……。
ベンチが、動き出してる。
やっぱり、気付かれてたか……。
ベンチには、詩織も居る。
ヤバイな。
多分、詩織が一早く気付いたんだろう。
オレは、自分のポジションに付いた。
相手のキックオフ。
オレは、騙し騙しフィールドを駆ける。
が、足が自分の足じゃないみたいだ。
指示を出しながら、自分も必死に走る。
味方の誰かが、ボールを外に出した。
と同時に。
「NO.11OUT。NO.23IN」
とコールされた。
オレは、センターまで走って後輩選手とハイタッチを交わす。
フィールドに頭を下げて、ベンチに足をひきつりながら向かった。