充電
部室に着くと、なぜだかキャプテンマークをコーチから渡された。
「オレが、キャプテンなんですか?」
オレは、コーチに訪ねる。
「お前が一番の適任者だろ」
と、当たり前のように言う。
イヤイヤ、ブランクありますから…。
って言っても聞いてもらえそうもない雰囲気。
ハァー。
何で、こんな事になってるんだ。
後輩の応援に来ただけだったのに……。
「玉城。時間がないから、早く着替えろよ」
コーチに急かされた。
「はい」
オレは、与えられたユニフォームに着替え、スパイクを履くとグランドに向かった。
取り敢えず、詩織に充電させてもらおうか…な。
オレは、グランドに入る前に詩織のところに向かう。
と、この間顔を会わせたヤツが、こっちに向かってきた。
ヤツは、オレの顔を見て会釈だけして、行ってしまった。
なんだ?
「詩織。アイツ、サッカー部だったんだな」
詩織に聞くと。
「そうみたいだね。私も、今知ったばかり」
しおりも戸惑っていた。
何を、戸惑ってるんだか……。
「そっか…。試合の前に充電させて欲しいんだけど…」
オレは、詩織の腕を引っ張って、校舎の影に連れ込む。
そして、詩織のプックリとした唇に自分のを重ねた。
唇を離すと、頬を少し赤めた詩織が、慌てて周りを見渡す。
その姿が、小動物のように可愛くオレの目に写る。
「大丈夫だって、誰も居ないから」
オレは、苦笑を漏らした。
そして、もう一度唇を重ね合わせた。
「よし、充電完了。しっかりオレを応援するんだぞ」
オレは、自分をアピールする。
詩織の応援さえあれば、何でも出来るって思うから。
「うん。でも、何でキャプテンマークなんか付けてるの?」
詩織が、不思議そうな顔をして、聞いてくる。
「監督とコーチに押し付けられた」
「そうなんだ。じゃあ、試合中に護の怒号が聞けるんだ」
詩織が嬉しそうに言う。
「怒号か…」
怒号かどうかは、わからないが…。
「でも、私は嬉しいよ。護のユニフォーム姿がまた見れて」
笑顔の詩織。
全く……。
この顔には、負けます。
「また、不意打ちかよ…」
オレの呟きに。
「だって、本当の事だもん」
ちょっと口を尖らせて、すねてみせる詩織。
なんだよ。
可愛いじゃねぇか……。
「わかった。じゃあ、応援よろしく」
オレは、詩織の頭を軽くポンポンと叩くとグランドに向かった。