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文化祭

文化祭に向かって、オレは準備に勤しんだ。

「優基…。衣装どうする?」

「俺?俺は、兄貴が持ってたから、それを借りる事にした」

「そっか…」

オレは、どうしようかな…。

考えながら、廊下を歩いてると。

「詩織。本当に大丈夫?」

と、声がした。

オレは、その方を見ると彼女が、少しふらつきながら、廊下を歩いていた。

そっと近付く。

「だいじょ…」

彼女が、そう返事を返そうとした時、前のめりで倒れていく。

危ない!

オレは、思わず後ろから抱き寄せた。

彼女が振り返る。

「大丈夫じゃないじゃん」

オレは、そのまま彼女を抱き上げた。

回りが、少し煩いが…。

「ちょっと、下ろしてください」

彼女は、顔を真っ赤にしながら、オレの腕の中で暴れだす。

「ダメ!このまま保健室に行くよ。こいつ、借りてく」

オレは、詩織の隣を歩いてた子の声をかけて、保健室に向かう。

何事かと、回りが遠巻きでオレ等を見てる。

彼女は、相変わらず暴れてる。

「詩織。あんまり無理するなよ。お前の事、心配してるんだからな」

「うん…。でも、今だけは、無理をさせてください。私は、やりたい。やりとげたい」

詩織の気迫が見え隠れする。

「皆が、私にくれた役だから、頑張りたいの。お願い、このまま体育館まで連れて行ってください」

詩織ちゃんが、涙目で訴えてくる。

「わかった。無理はするな。疲れたら、必ず言うこと。いいな」

彼女の体が心配だった。

「はい」

彼女は、素直に返事した。

オレは、体育館の入り口で下ろす。

彼女は、オレに笑顔を向けて体育館に入っていった。

本当に大丈夫なのか?

少し、熱っぽかったが…。

詩織は、頑張りすぎるから、不安だ。

…っと。

衣装、どうするっかなぁ…。

オレは、また悩み始めた。



文化祭当日。

オレは、朝から執事の格好をしていた。

「優基。これ、本当に良いのか?」

オレは、優基に聞く。

「いいよ。たまたま二種類あったし…。お前に合いそうだったからなぁ…」

優基が、オレに服を貸してくれることになった。

あの後、優基が。

「衣装決まってないなら、俺のところに二着あるから、貸したる」

って、言ってくれて、オレはそれを借りる事にしたのだ。

「朝イチの当番でよかったな。お互いに…」

優基が言う。

「本当だぜ。中間なんかで当番させられてたら見に行けなかった」

オレは、安心しながら言う。

「俺なんか、ステージがあるから、それどころじゃないがな」

優基が、苦笑してる。

そっか…。

「おい。準備いいか?開店させるぞ!」

委員長の声。

「OKです」

「オー!」

「…っと。水沢と玉城は店の呼び込みに行ってこい」

委員長が言い出す。

「えーっ。何で、オレ等が?」

オレの疑問に。

「お前らが、一番まともだからだろ」

と言われ、回りを見る。

まぁ、確かにそうかも。

「と、言う事でよろしく」

委員長が、オレ達の背中を押して、外に出す。

「…ったく」

優基が、溜め息をつく。

「仕方ないじゃん。放り出されちまったんだし。呼び込みするか…」

オレは、半ば諦めて声を出した。

オレ達は、執事の格好で下駄箱に行く。

その間に何人かの女子が振り返ってきたが、オレ達はお構い無し。

「注目浴びてるな」

オレが言うと優基が。

「そうか?俺は、気にならんが…」

平気そうな顔をして歩く。

下駄箱に着くと。

「3Aで、執事&メイド喫茶やってまーす。時間がある方は、是非お立ち寄りください」

二人で、声を揃えて言う。

「優基さん」

後ろから、声が掛かる。

「里沙ちゃん」

あれ、この子。

確か、詩織の友達だ。

「こんな所で何してるんですか?」

興味津々で聞いてくる。

「あぁ。クラスの呼び込みだよ。里沙ちゃんも遊びに来てよ」

「じゃあ、優基さんがやってる時間にでも…」

里沙って子は、はにかんだ笑顔で言う。

「今が、その時間なんだ」

優基も、笑顔で答える。

「そうなんですか…。玉城先輩も同じなんですか?」

急にオレに振るから。

「えっ、あ、ああ…」

ってしか答えられなくて。

「詩織、その事知ってますか?」

「いや、教えてない。…って言うか、詩織、今忙しいんじゃないか?」

「大丈夫ですよ。詩織、今最後の台詞合わせしてるだけだし…。あの子、一度覚えた事、直ぐに覚えてしまうから、脱け出しても平気ですよ」

「幼馴染みだけあって、よく理解してるね里沙ちゃん」

優基が、笑顔で言う。

優基に誉められて、頬を染める里沙ちゃん。

「じゃあ。あたし、詩織を誘って、今から行きますね」

里沙ちゃんが、教室に戻って行く。

「さぁって、もう少し呼び込みしてから、戻るか」

優基が、張り切って呼び込みしだした。



オレ達が自分のクラスに戻ると、さっきの里沙ちゃんと詩織の姿があった。

「おっ。早速来てるな」

優基が、里沙ちゃんに声を掛けてる。

オレは、それを横目で見ながら、詩織に声を掛けた。

「お嬢様。いらしていたんですね」

「エッ…」

詩織が、振り返る。

ウワーーー。

なんか、いつもと違う。

「護…さん?」

詩織が、顔を赤くする。

エッ……。

なんかしたかオレ?

って言うか、詩織の格好って…。

衣装ドレスを着た詩織は、綺麗すぎて、見とれてしまった。

「ごめんなさい。場違いですよね…」

そう言って、席を立とうとする。

「大丈夫だよ、そのままで。注文した?」

「まだです…」

「では、お嬢様。ご注文を賜ります」

「アイスミルクティーをお願いします」

恥ずかしそうに言う彼女にオレは、笑顔で対応する。

「かしこまりました」

オレは、そう言って裏に行くと、アイスミルクティーを準備する。

そして、イチゴのショートケーキを一緒にのせて戻る。

「お待たせ致しました、お嬢様。アイスミルクティーとイチゴのショートケーキです」

「エッ…。ケーキは、注文してないけど…」

詩織が、戸惑い出す。

「こちらは、私からの本の気持ちです」

オレは、詩織に向けてウインクする。

すると、詩織の顔が赤くなる。

「よかったじゃん、詩織。あたしもケーキ食べようかなぁ」

って、隣に座ってた里沙ちゃんが言う。

そこに。

「すみませーん。注文いいですか?」

店の奥から聞こえてきた。

「少々お待ちを、お嬢様」

オレはそう言って、そっちに向かう。

「お待たせ致しました。ご注文をどうぞ、お嬢様」

オレは、注文を聞き終えて、裏に行きオーダーを準備して持っていく。

ホールに戻ると、彼女が美味しそうにケーキを頬張ってる姿が見えた。

よかった。

「お待たせ致しました。お嬢さん」

オレは、注文の品をそれぞれ置き、注文表をテーブルに伏せて置くと。

「ごゆるりとお寛ぎ下さい」

一言を言い残し、その場から離れようとした。

「ねぇ、あなた。彼女とか居るの?」

またか…。

「そういう事は、聞かれない方が…」

オレは、曖昧に答えた。

「モテルタイプだよね。彼女居ないなら、私と付き合いませんか?」

「すみません。それは出来ません」

オレは、はっきりと断って、その場を離れた。

彼女が居る前で、何て事を聞きやがるんだ。

オレは、彼女に目を向けた。

彼女もオレを見ていた。

視線が絡む。

直ぐに、はずされた。

ヤバイな。

彼女が、不安がってるのが目に見える。

オレは、彼女の傍に行き。

「お嬢様。どうかされましたか?」

って、オレ気にしすぎか?

「いえ。何も…」

彼女が、小声で言う。

「オレは、詩織だけだから。ドレス姿、可愛いよ。劇、観に行くから、頑張れよ」

オレは、彼女の耳元で囁くと、恥ずかしそうにオレの方を向く。

顔を赤くしながら、ゆっくりと頷いたのだった。

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