優基の一言
さて、何していようか…。
受験も終わったし、することがない。
取り敢えず、教室に行くか…。
オレは、自分の教室に向かった。
教室では、案の定アイツ等が屯って居た。
「玉城くん。今来たの?」
ちひろが、オレに気付き近づいてきた。
「そうだよ。悪いかよ」
オレは、そう言いながら何をするわけでもなく、自分の席に座る。
「玉城。大学、受かったんだって?」
「ああ。第一志望を突破した」
そう。
詩織との婚約に一歩近づいたんだ。
「すごーい。ちひろ、いいなぁ。こんな彼氏、私も欲しい」
ちひろの取り巻きの一人が言う。
「ちひろとは、何でもないから」
オレは、つい発していた。
「はっ?だって、ちひろとお前ってクラス公認……」
もう、弁解するのめんどくさい。
優基が居てくれれば……。
て思ったところに。
「おっ、護。合格おめでとさん」
軽い口調の優基が、教室に入ってきた。
「ありがとう」
オレが、こいつの登場で、ホッとしてる自分が可笑しかった。
「これで、一歩前進したな。後は、卒業するだけだな」
優基が、皆の前で意味深な言葉を発する。
こいつは、わざと言ってるだろうと思わされる。
「何が一歩前進なの?」
周りの奴等が、騒ぎだす。
「エッ。詩織とこいつの婚約」
優基は、悪気なく続けていく。
まぁ、説明は優基に任せた方が早いかも……。
「「「エーーーーーーーーーーッ」」」
クラスの連中の絶叫。
教室に響き渡る。
「どういう事なんだ?」
オレに詰め寄ってくる。
「詩織って、生徒会長の詩織ちゃんだろ?」
「俺、狙ってたのに……」
「何で、お前が……」
って……。
詩織、お前って人気高いな……。
「そうだよ。詩織がブルーに陥ったときに、それを奪還させたの護だし…。親父も、条件付きで婚約の承諾したからな」
優基がどんどん話し出す。
オレの出番は、無さそうだな。
「そんな……」
「詩織ちゃん……」
なんか、情けない声が聞こえてきた。
「それに、こいつ喰っちゃってるし…」
いらん事を優基が小声で言う。
「優基!!」
「本当の事だろうが」
それを言われたら、何も言えないだろうが…。
オレが、押し黙ってると。
「玉城。水沢が言ったこと、本当なのか?」
「全て本当の事だ。オレは、アイツしかいらない」
堂々と宣言した。
そう。
オレには、詩織しかいらない。
詩織が居てくれれば、それでいい。
何時しか、そう思うようになってたんだ。
「護。そろそろ時間じゃないのか?」
優基が、声をかけてくれる。
「お前は?」
聞き返すと。
「俺はまだ用があるから、里沙ちゃんには、先に帰っていいよって言ってある」
優基がそう答える。
「そっか。じゃあ、オレ、行くわ」
それだけ言って、教室から逃げるように出た。
まさか、こんな事になるとは、思ってなかったが……。
これでちひろとの事が終わってくれるなら、それでいい。
だが、詩織に被害が及ぶなら、オレは軽はずみな行動に出たんじゃないかと思わされる。
どっちに転ぶんだろうか?
何回、奴等にちひろとの事を否定し続けなければならないのか?
どうせ、今居た奴だけしかこの話は知らないだろう……。
居なかった奴等には、また話す事になるのか?
そんな事を考えながら、生徒会室に辿り着く。
だが、詩織が出てくる気配がない。
オレは、ドアを開けて中に入った。